• 相続により配偶者が取得する配偶者(長期)居住権に基づく敷地利用権は小規模宅地特例の対象に。
  • 配偶者以外の相続人等が取得した土地所有権(敷地利用権が設定された敷地)は適用要件を満たせば特例の対象。
  • 特例の対象面積は、敷地利用権と土地所有権の価額割合により按分。

民法改正により創設される配偶者(長期)居住権とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人が所有する建物について、①遺産分割によって居住権を取得するものとされた場合又は②配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合に、配偶者がその居住建物の全部を無償で使用及び収益することができる権利のことである(改正民法1028①)。この配偶者居住権に関する改正は平成32年(2020年)4月1日から施行される。この民法改正に対応するかたちで、平成31年度税制改正では、相続税の課税対象となる配偶者居住権(建物部分と敷地部分)の財産評価の方法が定められている(相法23の2)。居住建物の敷地部分の評価方法(評価額)はのとおりである。

ところで、被相続人の居住の用に供されていた宅地(土地又は土地の上に存する権利)は一定の要件を満たせば小規模宅地特例の適用対象となる(措法69の4)。配偶者居住権に基づく敷地利用権は、土地の上に存する権利に該当する。また、配偶者には申告期限までの利用・所有要件がないことから、配偶者が取得する敷地利用権は小規模宅地特例の適用対象となる。

一方で、配偶者以外の相続人等が土地所有権(配偶者居住権に基づく敷地利用権が設定された敷地全体)を取得した場合については、被相続人が居住する建物に同居していた親族などが特例適用のための要件(申告期限までの利用・所有など)を満たせば小規模宅地特例の適用対象となる。したがって、土地所有権を取得した配偶者以外の相続人等が特例適用の要件を満たした場合には、配偶者が取得する敷地利用権を含む敷地のすべてに小規模宅地特例を適用することができることになる。なお、特例の対象面積は、敷地利用権と土地所有権の価額の割合により按分される(措令40の2⑥)。

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