- 建築積算に係る数量積算業務の対価として、技術士などの資格を有さない個人に対して支払う報酬は源泉徴収の対象と判断(東京地裁平成30年12月20日判決)。
- 数量積算業務を受注した無資格者は源泉対象となる「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当。
報酬の支払いを受ける者が個人であるとき、その支払う報酬が源泉徴収の対象となるか否かに悩むケースは少なくない。本件は、原告会社が建築士や技術士などの資格を有しない個人(以下「本件無資格者」)に対して本件業務の対価として支払った報酬が源泉徴収の対象となる所得税法所定の報酬に該当するか否かが問題となったものである。より具体的には、本件無資格者が源泉徴収の対象となる「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」(所法204①二、所令320②)に該当するか否かが問題となっていた。
原告会社は建築設計時の概算書の作成等を業務とする法人である。原告会社が本件無資格者に発注した本件業務は、建築積算業務のうち、建築物等の設計図書から建築資材の数量を算出する業務であった。裁判のなかで原告会社は、本件業務は科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする業務に当たらないと指摘したうえで、本件無資格者は「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当しないから、その報酬は源泉徴収の対象外であると主張していた。
東京地裁はまず、設計図書から建築資材の数量を算出する数量積算業務は技術士が行う業務である「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」(技術士法2①)に当たると解釈した。そして本件について地裁は、原告会社が本件無資格者に対して発注していた本件業務は設計図書から建築に使用する建築資材を読み取り、その数量を計算するものであったから、建築積算業務のうち数量積算に相当する業務であったと指摘。この点を踏まえ地裁は、原告会社が本件無資格者に対して発注していた本件業務は「技術士の行う業務と同一の業務」(所令320②)に当たり、本件無資格者は「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」(同項)に該当することから、本件業務の対価として原告会社が本件無資格者に支払った報酬は源泉徴収の対象になる報酬(所法204①二)に該当すると判断した。