- 納税者が海外事業者からの委託により国内事業者から買い付けたとする本件取引が課税仕入れに該当するか否かが問題となった税務訴訟で納税者敗訴(東京地裁平成31年2月20日判決・確定済み)。
- 地裁、納税者と国内事業者との間に売買契約はなく、納税者が売買契約の当事者とは認められず。
今回紹介する税務訴訟で問題の1つとなったのは、納税者による本件各取引が課税仕入れに該当するか否か(仕入税額控除の可否)という点である。
納税者(香港居住)は、日本国内の事業所において商品を香港へ輸出する事業を営んでいた個人事業主である。香港などに所在する事業者(以下「海外事業者」)から委託を受けて納税者は、日本の国内事業者数社(以下「国内事業者」)から商品を買い付けたとする本件各取引について、納税者が国内で行った課税仕入れに該当するものとして課税仕入れに係る支払対価に含めて申告をした。これに対し税務署は、本件各取引は納税者が行った課税仕入れに係る支払対価とは認められないとして、消費税の更正処分等を行った。これを不服とした納税者は、税務訴訟のなかで、納税者は海外事業者から委託を受けて国内事業者から商品の買付けおよび商品の海外への輸出を行っていたと指摘し、納税者が国内事業者に商品代金として支払った金額は納税者の課税仕入れに係る支払対価の額に該当する旨を主張した。
東京地裁はまず、本件各取引が納税者が行った課税仕入れに該当するというには、納税者が本件各取引により資産を譲り受けた事業者と認められる必要があると指摘したうえで、納税者と国内事業者との間に売買契約があったと認められることが必要であるとした。そして本件については、納税者と国内事業者との間で契約書等は作成されていない一方で、国内事業者は海外事業者との間で売買契約等を締結していることを指摘し、本件各取引には納税者と国内事業者との間に売買契約があったといえる外形的根拠はないとした。また、発注する商品の内容や数量の決定に関与しているのは納税者ではなく海外事業者であり、商品代金の決定に納税者の意思の介在はなくその実質は立替払いであると指摘し、本件各取引に納税者が売買契約の当事者として関与していたとは言い難いとした。
以上の点などを踏まえ地裁は、納税者が本件各取引により資産を譲り受けた事業者であるとして本件各取引の課税仕入れを行っていたと認めることはできないと判断したうえで、納税者の請求を棄却した。