• 法人税と消費税の申告実務に、申告期限の違いによる齟齬が発生。
  • 申告期限の延長特例を受ける企業でも、消費税に申告期限の延長制度がないことから、法人税の申告調整業務を消費税の申告期限に間に合うよう行い、さらにその後の法人税の申告プロセスで新たな調整項目が見つかれば消費税の修正申告、更正の請求が必要に。

法人税の確定申告書は原則として事業年度終了の日の翌日から二月以内に提出しなければならないとされているが(法法74条、81条の22)、特例として、単体納税の場合は一月、連結納税の場合は二月の申告期限延長が認められている(法法75条の2①、81条の24①)。

一方、消費税にはこのような申告期限の延長制度はなく、事業者は、課税期間の末日の翌日から二月以内に消費税に係る申告書を提出し(消法45条①)、消費税を納付しなければならない(消法49条)。

このため、例えば申告期限の特例を受けている単体納税の3月決算法人では、5月末の消費税の申告期限に間に合わせるため、本来は6月末までに行えばよい法人税の申告調整業務(売上計上漏れや経過勘定のチェックその他)を、GWを返上して5月中に行わなければならないという事態が生じている。

また、消費税の申告を済ませた後、法人税の申告プロセスで新たな調整項目が見つかった場合には、消費税の修正申告、更正の請求を行わざるを得なない。

こうした中、事業者の間では、消費税にも申告期限の延長制度を設けるべきとの声が高まっている。

消費税の申告期限の延長を求める声はかねてから聞かれたところだが、過去の税制改正でとり上げられることはなかった。しかし、平成28年度税制改正における国税通則法の見直しにより、調査通知以後から調査による更正等予知前までの修正申告については、その申告に基づいて納付すべき税額に5%(又は10%)の過少申告加算税が課されるようになったことや、上述のような業務負荷が現在政府が推進している「働き方改革」に反するのではないかとの指摘が、消費税の申告期限延長論を後押ししている。

また、政府はデジタル化による税務手続きの簡素化を目指しているが、消費税の申告期限の延長はこの税務手続きの簡素化という文脈にも沿っている。

消費税の申告期限の延長が令和2年度税制改正議論の対象となる可能性は十分にありそうだ。