• 第二次納税義務の受けた利益の算定において、無償譲渡した不動産の価額が争われた事案。
  • 審判所は財産評価基本通達を参考にして評価することは妥当とはいえないと判断。納税告知処分の一部を取り消した(令和元年6月4日)。

今回の事案は、原処分庁が滞納国税を徴収するため、滞納者から生前に不動産の贈与を受けていた請求人らに対し国税徴収法に基づく第二次納税義務の納付告知処分を行ったが、請求人らが第二次納税義務者として納付すべき限度額の算定に誤りがあるとして原処分の一部の取消しを求めたもの。請求人らは、贈与者(滞納者)が各係争不動産を贈与したことがなかったならば、各係争不動産は別件各公売不動産と一緒に公売されていたと想定されるから広大地評価による減価を考慮して算定すべきであるなどと主張していた。

審判所は、国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)の「受けた利益の限度」の額の算定における受けたものの価額は、譲受財産が不動産である場合にはその現況に応じて、無償譲渡等の処分がされた時又は納付通知書を発した時における客観的な交換価値である通常の取引価額により算定するものと解するのが相当であるとした。その上で審判所は不動産鑑定士による鑑定評価を行っており、その結果、原処分庁の納税告知処分の一部を取り消している。なお、審判所によると、徴収関係の事件で不動産鑑定士による鑑定評価を行ったことは初めてということだ。

本件については、請求人らは広大地評価の適用による減価を考慮して価額を算定すべきであると主張するが、審判所は各贈与がなかったという過程に基づくものにすぎないと指摘した。一方、原処分庁は、譲受財産の価額を財産評価基本通達により算定することは特段不合理ではないと主張するが、審判所は、評価通達は相続税等の課税価格計算の基礎となる財産の評価を定めたものであり、譲受財産の価額の算定に評価通達を適用すべきとする法令等の規定は存在しないと指摘。本件では、審判所が原処分庁とは異なる算定をした本件各係争不動産のうち、建物の一部が隣接地との境界を越えて建っていること、一部の土地上に経済的合理性を有しない賃貸用建物が存在すること、建物の所有者に使用借権があること、一部の土地が共有関係にあることなどを考慮して算定する必要があるにもかかわらず、原処分庁が算定した価額ではこれらの事情が適切に考慮されていないから、価額の算定に際して評価通達を参考にするのは妥当とはいえないとの判断を示した。