• 漢方薬等の購入費用が、医療費に該当するか争われた事案(令和元年5月22日裁決)。
  • 審判所、日本薬局方に収載されている成分を含んでいても、使用目的が食品に限定されていれば医薬品に該当しないと判断。
  • 医薬品に該当も、健康維持等に用いられ、医師の処方せん無しで購入可能なものは医療費に該当せず。

本事案は、請求人が親族のために購入した4種類の漢方薬等(本件漢方薬等)の費用が医療費控除の対象となる医療費に該当するか否かが争われたものである。原処分庁は、請求人が購入した漢方薬等は健康補助食品であり、医療費に該当しないとして所得税等の更正処分等を行ったが、これに対して請求人は、本件漢方薬等のうち2種類の製品については日本薬局方(医薬品医療機器等法に基づく医薬品の規格基準書)に収載されている成分が含まれ、薬局でのみ販売され、薬剤師の指導の下に治療に使用されているものであるから、医薬品に該当するなどと主張していた。

審判所は、医薬品(所令207条二号)とは薬機法2条1項に規定する医薬品をいい、同項に規定する医薬品であっても、疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入対価は医療費に該当しないとの見解を示した。

その上で本件漢方薬等のうちの2種類の製品については、日本薬局方に収載されている成分が含まれているが、製薬会社は健康補助食品として製造販売しており、その使用目的が食品に限定されたものであることから、医薬品に該当しないとの判断を示した。

また、本件漢方薬等のうち残りの2種類の製品については医薬品に該当するものであったが、医療費に該当する「治療又は療養に必要な薬品の購入」の対価であったか否かについて判断が行われている。

審判所は残りの2種類の製品は医薬品ではあるものの、医師の処方せんがなくても薬局等で購入可能なものであり、また、その効能効果は滋養強壮であり、一般的に疲労回復や健康維持のために用いられるものであると指摘した。

その上で請求人提出資料並びに審判所の調査等によれば、残りの2種類の製品についても、医師の治療に関係して服用されていたものではないことなどから、請求人の親族の「治療又は療養に必要な医薬品」でなかったと判断。本件漢方薬等の購入費用は医療費控除の対象となる医療費に該当しないと結論付けた。