• 会社がその代表者の内縁の妻に対して支給した給料が仮装経理等による役員給与に該当するかが争点となった事案について、東京高裁は1月16日、会社の控訴を棄却する判決を言い渡した。
  • 会社からの給与名目の支給は「内縁の妻の内助の功に報いるための生活保障の趣旨で支払われていたもの」と認定した一審判決を支持。

本件は、内国法人である控訴人(有限会社)が、その代表者Aの内縁の妻Bに給与を支給し、その全額を損金算入して確定申告をしたところ、所轄税務署長から「同金額は、仮装して経理をすることによりAに支給された役員給与の額であるから、法人税法34条3項の規定により、損金の額に算入することはできない。」などとして課税処分等を受けたことを不服とし、その取消しを求めた事案である。

本件の第一審(東京地裁令和元年5月30日判決)では、役員が個人として負担すべき費用を法人が負担することによってその役員に付与される経済的利益についても「法人税法34条4項が定める『その他の経済的な利益』に該当し、役員給与に含まれる。」と判示したうえで、Bの勤務状況について詳細な事実認定を行った。その結果、Bの業務を「Bの仕事の一部に会社の業務といえるものが含まれていたとしても、家庭の主婦が夫に頼まれて行う事務の範囲にとどまる軽微な内容のものにすぎない。」「Bが行っていた活動はいわゆる内助の功に他ならないものである。」などと認定。その上で、「会社のBに対する給与名目の支給は、Aが自己のために多大な労苦を伴って尽くしている内縁の妻であるBの内助の功に報いるための生活保障の趣旨で支払われていたものと認めるのが相当であり、これはAが個人として負担すべき費用を原告が負担したものにほかならない。」と判断を示した。

さらに第一審は、「会社の費用負担によりAが得た経済的な利益は、法人税法34条4項が定める『その他の経済的な利益』に当たり、Aに対して支給する給与に含まれる。」「Aに対して支給した役員給与をBに対して支給した給与手当であると事実を仮装して経理することにより支給したものと認めるのが相当である。」として、課税処分等を容認していた。

東京高裁第19民事部(都築政則裁判長)は、原判決の判断理由を引用し、「当裁判所も控訴人の請求をいずれも棄却すべきである。」として、本件控訴を棄却している。本件控訴審判決は、控訴人の上告断念により確定した。