• 役員給与の「不相当に高額な部分」を巡り納税者側が敗訴(東京地裁令和2年1月30日判決・清水知恵子裁判長)。
  • 東京地裁は、当該役員の職責等に一定の評価をし、国が主張する同業類似法人の“平均額”ではなく“最高額”を超える部分を「不相当に高額」と認定。

本件は、中古自動車の輸出事業を行う原告が支払った役員給与の「不相当に高額な部分」(法人税法34条2項)の有無とその金額が争われた事案である。本件役員給与は株主総会で決議された限度額を超えていなかったため(形式基準を充足)、東京地裁は実質基準に従って検討を行った。

まず、(a)当該役員の職務の内容については、「中古自動車販売業を目的とする法人において営業や販売を担当する役員について一般的に想定される職務の範囲内にあるとはいえ、原告の売上げを得るために本件代表者が果たした職責及び達成した業績は相当高い水準にあったということができる」と評価した。

しかしながら、(b)原告の収益及び使用人等に対する給与の支給の状況については、「本件役員給与は、他の役員に支給された役員給与と比べて著しく高額であるばかりでなく、原告の収益が、本件各事業年度を通じて減少傾向にあり、使用人に対する給与の支給額も横ばいないし緩やかな減少傾向にある中で、これに逆行する形で急増し、原告の改定営業利益の大部分を占め、原告の営業利益を大きく圧迫するに至っており、その額の高さ及び増加率は著しく不自然である」と判断した。

そして、(c)同業類似法人の役員給与の支給状況等との比較については、国が抽出した同業類似法人を合理的とした上で、その最高額と比較し、平成27年7月期には約10倍、金額にして約4億7000万円高額となっている点などを指摘、「このような較差は、本件代表者の職務内容や原告の売上げを得るために本件代表者が果たした職責等を踏まえても、合理的な範囲を超えるものといわざるを得ない。」とした。

しかし、「原告の売上げを得るために本件代表者が果たした職責及び達成した業績が相当高い水準にあった」との事情を考慮し、本件各抽出法人の役員給与の“最高額”を超える部分が不相当に高額な部分に当たると結論づけた。

一方、「不相当に高額な部分=同業類似法人の“平均額”を超える部分」とする国の主張は排斥された。“平均額”を基準として争われる事件が多い中で、納税者有利の判決が示されたとの見方もできそうだ。