• 審判所、課税仕入れを行った日の状況を客観的に判断すれば「共通対応」区分が相当と、原処分一部取消し(令和元年7月17日裁決)。

本件は、調剤薬局等を営む法人が、調剤薬品等の課税仕入れを共通対応に区分すべきところ、誤って非課税売上対応に区分していたとして更正請求をしたが原処分庁に認められず、審査請求に至った事案である。

本件調剤薬品等は、主に医師の処方箋に基づき販売されるか、他の薬局に販売されていた。前者のうち健康保険法等が適用されるものは消費税法上「非課税売上」となるが、他の薬局への販売や自費診療に係る販売などは「課税売上」となる。

国税不服審判所はまず、課税仕入れの用途区分の判定について、課税仕入れを行った日の状況により行うとする消費税法基本通達11-2-20を相当とし、「課税仕入れを行った日の状況等に基づき、当該課税仕入れをした事業者が有する目的、意図等諸般の事情を勘案し、当該事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すると解するのが相当」との解釈を示した。

そして、請求人の仕入れの実態について、「患者等が持参した処方箋に在庫のない医薬品が処方されていた場合に備えて、地域薬局間で医薬品を融通し合うことを以前から日常的に行っていた」として、問屋からの仕入れ分については「他の薬局からの都度の要請という仕入れ後の事情により、一定数は必ず他の薬局へ販売する状況にあった」と認定。この点を踏まえ、課税仕入れを行った日の状況としては、「将来、その他の資産の譲渡等のみに要するとはいえず、(中略)共通売上対応に区分するのが相当」と結論づけた。

ただし審判所は、他薬局からの仕入れ分は全て健康保険法等が適用されて販売されており、納税者が非課税売上対応と区分したことに誤りはないとして、問屋からの仕入れ分についてのみ原処分を取り消している(一部取消し)。

原処分庁は、請求人が①本件調剤薬品等を非課税売上げ目的で仕入れたものと区分していたことや、②課税売上げの金額が非課税売上げの金額に比して僅かであることなどを理由に、当初「非課税売上対応」に区分したことは合理的と主張していたが、これらの主張はすべて排斥された。マンション販売事業者の用途区分判定をめぐる裁判では、非課税売上の額が僅少である旨の納税者側の主張が東京地裁に排斥されたが、本事案では逆に原処分庁がこれ(額が僅少であること)を区分判定の根拠として主張したという点でも興味深い裁決と言えよう。