- 四半期決算発表で大幅減益・赤字企業が続出、令和3年度税制改正で欠損金の繰越控除制度の緩和を求める声高まる。
- 繰越期間の延長、大法人を対象とした控除キャップの見直しが議論される可能性も、税務調査等の対応負荷増加、財源など高いハードル。
- 財源として、賃上げ・投資促進税制の適用期限延長を見送る意見も。
今年4-6月期のGDPが戦後最悪のマイナス成長を記録し、各社の四半期決算発表でも大幅減益・赤字が続出するなど、新型コロナウイルス感染症の経済への影響は甚大なものとなっている。こうした中、令和3年度税制改正で欠損金の繰越控除制度の緩和を求める声が高まっている。とりわけダメージが深刻なのは需要が“蒸発”したといっても過言ではない航空・鉄道業界であり、原油価格の下落の影響を受けた石油業界、鉄鋼業界、電機業界、さらには商社業界からも同様の声が上がっている。
企業からの要望が特に強いのが、現行9年(平成30年度以後発生欠損金については10年)とされる欠損金の繰越期間の延長だ。コロナからの早期V字回復の見通しが立たない中、控除可能期間をできるだけ長めに確保しておきたいという思惑がある。
ただ、会社法上の帳簿保存期間が10年であることとの整合性のほか、税法上も、繰越期間を延長すれば欠損金に係る帳簿書類の保存期間(10年)及び更正期間(10年)も延長せざるを得ず、税務調査等の対応負荷が増加するなど、ハードルは高い。
こうした中、大法人に対する控除キャップ(当期所得の50%まで)の見直し、具体的には、コロナの影響が出始めた令和元年度及び多額の欠損金の発生が予想される令和2年度を念頭に、令和3年度以降、一定期間、控除キャップを撤廃又は大幅に緩和すべきという意見も出ているが、こちらは財源が問題になりそうだ。過去の改正では、キャップの10%緩和につき、最大1,000億円弱の減税となっていた。控除キャップの緩和には、財源をどのように調達するのかという問題の解決が不可欠となる。企業からは、今年度末に到来する賃上げ・投資の促進に関する税制(旧所得拡大促進税制)の適用期限を延長せず、財源としてもよいのではないか、との声も上がっている。これには、コロナの影響で賃上げどころではなく、延長しても3%の賃上げ要件を満たせない可能性が高いという事情もあるが、それだけ企業の危機感は強い。法人税率の引き下げ財源として相次いで控除キャップを縮減してきた経緯がある中、関係省庁や税制当局の決断が注目される。