- 令和3年度税制改正で個人住民税の特別徴収税額通知(納税義務者用)の電子化が法制化。仕訳、保管、郵送等のコストの大幅軽減も。
- ただし、施行は令和6年度。各自治体の対応の違いにより電子と紙が混在する事態を避けるため、全国一斉の施行目指す。
- マイナポータル直送案は見送り。
特徴税額通知には個人向けの「納税義務者用」と特別徴収義務者である企業向けの「特徴義務者用」の2種類があるが、このうち書面による「特徴税額通知(特徴義務者用)」については平成30年度税制改正で個人番号の記載が不要とされ、企業の保管コストの大幅低減が図られたところだ。
これに対し、「特徴税額通知(納税義務者用)」の電子化は、平成30年度・31年度税制改正と導入が見送られてきた。その背景には、「納税義務者用」の特徴税額通知は、市区町村から企業が受領した通知について「企業⇒納税者」という交付フローとなるため、電子環境が整備されている金融等のサービス業においては電子化へのニーズが極めて高いものの、工場等を有し電子環境が完全に整備されていない製造業者等を中心に「電子化のメリットを享受できない恐れがある」との声が少なくなかったということがある。
こうした中、令和3年度税制改正では、個人住民税の特別徴収税額通知(納税義務者用)の電子化が実現する。通知を電子的に納税義務者に送付する体制の整った特徴義務者で、かつ、電子的な送付を実際に希望する事業者は、給与支払報告時にeLTAXで電子的送付の希望を市区町村に申し出ることになる。この申し出は任意であり(今後も義務化されるわけではない)、工場等の現場を抱える場合など、電子的送付の体制が整っていない特徴義務者は、従来通り、紙で通知を受け取ることになる。
特別徴収税額通知(納税義務者用)電子化の施行は令和6年度となる。全市区町村が電子化に対応できていない「過渡期」においては自治体によって電子と紙が混在する恐れがあり、かえって非効率となるため、全国一斉の施行を目指す。
一方、特徴義務者が希望するマイナポータル直送案は採用されなかった。菅政権のもとマイナンバーカードの普及等が進むと見られるものの、それでも暫くは国民全員が利用可能とはいかないと見られるからだ。
上述の通り、企業によっては本改正案の便益を受けられないが、本改正は「できるところから」電子化を進めるという趣旨で実施されるものであり、企業は歓迎している。導入後は普及が課題となろう。