• 列車走行による騒音によって利用価値が著しく低下しているとして、減額して財産評価をすべきか否かが争われた事案(令和2 年6月2日裁決)。
  • 審判所、騒音が日常的に発生しており取引金額に影響を受けていると判断し、土地の評価額を10%減額。

本事案は、相続財産である本件土地が列車走行による騒音によって利用価値が著しく低下しているとして、減額して財産評価できるか否かが争われたものである。請求人は、本件土地は北西側に敷設された鉄道の線路敷から約10mから30mまでの範囲内に位置しており、鉄道騒音により利用価値が著しく低下している宅地に該当するなどとして相続税の更正の請求を行ったところ、原処分庁は利用価値が著しく低下している宅地に該当しないとして更正の請求の一部を認めない減額更正処分を行った。このため、請求人が更正処分の全部の取消しを求めていた。

国税庁のタックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」では、利用価値が著しく低下していると認められる宅地について、その価値に減価を生じさせている当該事情がその宅地の評価上適用すべき路線価の評定において考慮されていない場合に限り、その宅地固有の客観的な事情として10%の減額をするものとの取扱いを認めている。

国税不服審判所は、騒音により利用価値が著しく低下している宅地としてタックスアンサーにより減額して評価すべきであるのは、①路線価における騒音要因の斟酌、②騒音の発生状況、③騒音による取引金額への影響の3つの要件が満たされている場合とするのが相当であるとの見解を示した。その上で審判所は、市道に面する土地の路線価は、鉄道騒音の要因は斟酌されておらず、①の要件は満たすと判断。②の要件についても、請求人が本件土地において約1時間の騒音の測定をしたところ、基準値を上回る騒音が計測されており、騒音の頻度も高く、その測定方法に一定の信用性もあったことから、相当程度の騒音が日常的に発生していたことが認められるとした。また、本件土地の固定資産税評価額も鉄道中心線から10m以内に存する場合の補正率を適用して算定されているため、地積全体が鉄道騒音により取引金額に影響を及ぼしていると認めるのが相当であるとし、③の要件も満たしていると判断した。したがって審判所は、本件土地は騒音により著しく利用価値が低下している宅地に該当するとして、タックスアンサーの取扱いにより10%減額して評価するべきであるとした。