- 審判所、原処分庁が行った青色申告承認取消処分に伴う青色欠損金控除額の所得金額への加算について、更正通知書に理由の提示がないと指摘。
- 行政手続法14条1項本文の趣旨から理由の提示不備の違法があると判断し、更正処分を一部取消し。
本事案は、一般廃棄物および浄化槽汚泥の収集運搬業を営む同族法人(審査請求人)に対する推計課税の合理性、隠ぺい・仮装事実の有無が主な争点とされたものだが、争点以外の部分で更正処分の一部が取り消されている点が注目される。
審判所が問題視したのは、原処分庁が行った法人税の更正処分に係る理由の提示について。具体的には、青色申告承認取消処分に伴う青色欠損金の当期控除額の加算に関して、更正通知書にその理由の記載がないということだ。行政手続法14条1項本文は、不利益処分をする場合は同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしている。この規定の趣旨は、行政庁の判断の恣意抑制とともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えることであり、更正処分をする際には、更正通知書自体に法の要求する程度にその理由を提示する必要があるとされる。
本事案について、審判所は、請求人の平成24年8月期の確定申告書において損金算入された青色欠損金の当期控除額を所得金額に加算する旨の理由を提示する必要があるにもかかわらず、これが示されていないと指摘。更正通知書自体から青色欠損金の当期控除額を所得金額に加算する旨を特定し得る程度の理由が示されていないことは明らかだとして、理由の提示不備の違法があると判断している。
この点、原処分庁は、青色欠損金の当期控除額の加算については法文の規定上明らかであり、青色取消処分に伴うもので、請求人においても容易に認識できたから、理由の提示不備の違法はないと主張。しかし、審判所は、仮に原処分庁主張どおりの事情があるとしても、上記の行政手続法14条1項本文の趣旨からすれば、理由の提示に不備があったとの判断が妨げられることはないとした。
なお、本事案においては、①青色欠損金の当期控除額を加算した理由が示されていないことが更正処分全体の理由の提示を不備なものとする程度に至るとは認められないこと、②他に更正処分に係る理由の提示に不備も認められないことから、青色欠損金の当期控除額の加算の限りにおいて平成24年8月期の法人税の更正処分が取り消されている。