• 国税庁は4月23日、令和2年10~12月までの路線価について、大阪府大阪市中央区の地域で大幅な地価下落が見られたため路線価等の減額補正を行う旨を公表。
  • 今回、路線価の補正をする可能性が高いとされていた名古屋市中区錦は、補正の対象外も、個別の期限延長が可能。

国税庁は4月23日、令和2年10~12月分の路線価等について、大阪市中央区の一部地域において大幅な地価下落が確認されたとして、路線価等の補正を行うことを公表した。これにより、令和2年10~12月に相続等によって、該当地域における土地等を取得した場合には、路線価に地価変動補正率を乗じた価格で評価額を算出することとなる(令和2年10~12月分の路線価=路線価(R2.1.1時点の価格)×地価変動補正率)。

今回、路線価の補正を行うのは、大阪市中央区心斎橋筋1丁目、心斎橋筋2丁目、千日前1丁目、千日前2丁目、宗右衛門町、道頓堀1丁目、道頓堀2丁目、難波1丁目、難波3丁目、難波千日前、日本橋1丁目、日本橋2丁目、南船場3丁目の13地点(表1参照)。補正率は最大で「0.90」で、代表的な路線の改正後の10~12月分路線価(最高地点)は、心斎橋筋2丁目で1,958万円(令和2年分1月1日時点の路線価2,152万円)、宗右衛門町で1,899万円(同2,087万円)、道頓堀1丁目で1,678万円(同1,865万円)に修正されることとなった(表2参照)。国税庁によると、近年は、訪日観光客の増加により地価が大幅に上昇していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で訪日観光客の不在が長期化しており、要因が改善する見込みがないとして、地価下落が続いている傾向にあるとしている。

また東京都内においては、歌舞伎町1丁目(▲15%)が飲食店の自粛等の影響で大幅な地価下落が見られたほか、銀座(▲13%)、浅草界隈(▲12%)、有楽町、秋葉原付近(▲10%)でも地価が下落している。全国では、熊本県人吉市の一部地域(▲15%)、沖縄県恩納村のリゾートエリア(▲12%)、広島市中区胡町(えびすちょう)(▲12%)京都市東山区祇園(▲14%)、神戸市中央区三宮(▲13%)、奈良市東向(ひがしむき)商店街(▲14%)などで大幅な地価下落が見られたとしている。なお、7~9月における地価の状況が令和2年1月1日時点と比較して15%以上下落となっていたことから、10~12月分において路線価の補正をする可能性が高いとされていた、愛知県名古屋市中区錦3丁目に関しては、地価変動率が横ばい(▲16%)となったため、今回の地価変動補正率の対象地域となっていない。ただし、「個別の期限延長」により令和2年10~12月までの路線価の補正に係る公表の日(令和3年4月23日)から2か月間、贈与税の申告・納付期限を延長できることとしている。同庁によると、前回まで路線価補正の可能性が高かった浅草や名古屋市中区錦で地価変動率が横ばいとなった理由について、12月末時点でワクチン接種への期待感などの好材料がある一方で、感染者数の増加や様々な経済対策の一部中止などの不安要素もあり、様子見となったためとしている。

路線価等は、時価の80%程度を目途に評価しているが、新型コロナウイルス感染症の影響により相続税の申告までに地価が20%以上下落し、路線価が時価を上回る逆転現象が起きた場合は、補正率を乗じた評価ができることとされている。令和2年1~6月までの期間は路線価が時価を上回る状況が確認されなかったが、7~9月分においては、大阪市の一部地域で路線価が時価を上回ったため路線価等の減額補正を行っていた。年の途中で地価下落による路線価の減額補正を行うのは、今回で2回目となる。