- 譲り受けた債権の取得価額と回収額との差額の利益が一時所得と雑所得のいずれに該当するかが争われた裁判(令和3年1月29日)。
- 東京地裁は「雑所得」に該当すると判断し、原告の請求を棄却。本件利益は債権の譲受けの時点で確実に発生することが予測されたものであり、偶発的に生じたものとは認められず。
本件は、債権の取得価額と回収額との差額の利益の所得区分(一時所得か雑所得か)が争われた事案である。原告(納税者)は債務超過のX社の株式100株を1万円で譲り受けるとともに、AがX社に対して有する貸付金債権7,195万5,916円を103万円で譲り受けた。その後、X社の業績が回復し、原告は債権に係る債務の弁済を受け7,092万5,916円の利益を得たが、税務署から本件利益は雑所得に該当するとして更正処分を受けるとともに、過少申告加算税の賦課決定処分が行われた。
原告は、X社の買収に伴い回収することを前提としていない債権をたまたま譲り受けたところ、偶然にもX社に利益が生じたことから債権の回収ができたにすぎないものであり、本件利益は偶発的に生じたもので一時所得に該当すると主張した。
東京地方裁判所(市原義孝裁判長)は、一般に債権を額面額未満の譲渡代金額で譲り受ける者は譲渡代金額を超える額の弁済を受けて利益を得られることを期待して債権を譲り受けるものであるとしても、譲受け時点で譲渡代金額を超える額の弁済を受けられるか否かは不確定であるのが通常であるから、譲渡代金額を超える額の弁済を受けたことによる利益は、特段の事情のない限り偶発的に生じる利益というべきであるとした。
その上で本件についてみると、原告は知人からX社に仕事を回し損はしないようにするなどと言われX社の株式の譲受けを勧められていたことや、債権の譲受け前から知人の会社にX社が受ける工事の見積書が提出されているなどの一連の経緯からすれば、債権の譲受け時点でX社は債務を弁済し得るだけの資力を回復し、原告はX社が債務を弁済するといった事態を予測し得る状態に置かれ、かつ、これを予期して債権を譲り受けたものと認めるのが相当であるとし、裁判所は、本件利益は偶発的に生じたものとは認められないとの判断を示した。したがって、裁判所は、本件利益は偶発的に生じたものではないから一時所得に該当せず、利子所得などのその他のいずれの所得にも該当しないことから雑所得に該当するとし、原告の請求を棄却した。