• 成年後見人への相続税の小規模宅地等の特例の適用を求める訴訟で納税者が控訴。東京高裁で令和3年4月19日に第1回口頭弁論開催。
  • 控訴人(相続人)は、被相続人の成年後見人に就任している特殊性を考慮すれば、生計一要件を充たしていると主張。

本件は、被相続人Aの相続人であるBが、Aから相続した土地(以下、「本件土地」)について小規模宅地特例(以下、「本件特例」)を適用し、相続税の申告をしたところ、所轄税務署長より本件特例の適用は認められないとして相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、各処分の取消しを求めて提訴した事案である。

BはAの養子であり、本件相続の相続人はBとAの子Cの2人である。BはAと同じ市内に住んでいたものの同居はしていなかった。Aの生前にAの成年後見が開始され、成年後見人としてBが選任された。Bは本件土地にBの父(Aの兄)から相続した建物を作業場として使用して大工業を営んでいた。本件では、本件土地への小規模宅地特例適用の可否が争点となっている。

Bは、「判断能力のない成年被後見人に独立した生活単位など概念することができないことは言うまでもなく、身の回りの世話をするBと身の回りの世話をしてもらうAが同一の生活単位に属していることの要件を充たしていることは明らか」「身上監護・財産管理を行うBはAのあらゆる生活を助けており、相扶けて共同生活を営んでいるとの要件を充たしていることは明らか」「BはAと『生計を一にしていた』親族に該当する。」などと主張。

これに対し、原審の横浜地裁は令和2年12月2日、「『生計を一にしていた』との要件は、社会通念に照らして、被相続人と相続人が日常生活の糧を共通にしていた事実を要するものと解するのが相当である。」「事実からすれば、BとAとは、日常生活の糧を共通にしていたとはいえず、『生計を一にしていた』とは認められない。」「『生計を一にしていた』との要件に該当するというためには、Bの事業によって、BのみならずAの生計が維持されていたという関係がなければならない。」「原告の主張する事情は生計一要件を基礎づけるものであるとはいえない。」などと判示し、Bの主張を斥けていた。

Bは地裁判決を不服として控訴。「BがAとCの成年後見人に就任している本件においては、その特殊性を考慮して、本件特例の趣旨を没却しないように生計一要件を解釈・適用すべきである。」と主張している。