- 令和2年度の新規発生滞納額は5,916億円で、前年度より388億円増加。納税猶予の特例の適用等で、令和元年度分の滞納発生が後ろ倒しになったことが一因。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により滞納整理済額が前年度より減少したため、滞納残高が平成10年度以来22年ぶりの増加に転じる。
国税庁が8月5日に公表した「令和2年度租税滞納状況」によると、令和2年度に発生した新規発生滞納額は5,916億円であり、前年度に比べて388億円(+7.0%)増加したことが分かった。国税庁は、新型コロナウイルス感染症の影響によって申告所得税等の申告・納付期限が延長となったことや、納税猶予の特例が適用されたこと等により令和元年度分の滞納発生が令和2年度に後ろ倒しになったことが、新規発生滞納額の増加した一因になっていると分析している。滞納発生割合は0.89%であり、前年度に引き続き低い水準で推移した。
滞納整理済額は5,184億円で、前年度(6,091億円)より907億円(▲14.9%)減少した。同庁は滞納整理済額が減少した理由として、令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、納税が困難な納税者に対する猶予制度の適用を最優先に取組んだためであるとしている。結果として滞納残高は8,286億円となり、前年度より732億円(+9.7%)増加し、平成10年度以来22年ぶりに増加に転じることとなった。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な納税者に対し、無担保かつ延滞税無しで1年間納税を猶予する特例が、令和2年4月30日から令和3年2月1日まで導入されたが、国税庁は令和2年4月から令和3年2月までの間に適用された件数は32万件、税額は1兆5,176億円であったことを明らかにしている。
また、国税庁では、通常の手法では処理進展が図られないような事案については訴訟手法を活用した滞納整理にも取組んでおり、令和2年度においては102件の原告訴訟を提起し、終結は104件となっている。このうち国が敗訴した事案は0件であった。このほか、財産の隠蔽等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行っており、令和2年度は8件、13人員(個人及び法人)を告発した。同庁によれば、13人員のうち10人員が起訴されており、裁判所は刑が確定した8人員のうち、執行猶予付きの懲役刑が5人員(うち3人員は罰金も併科)、残りの2人に対しては罰金刑の有罪判決を下している。