- 市の施設の管理料が課税資産の譲渡等の対価に該当するか否かが争われた裁決(令和2年8月5日)。
- 国税不服審判所は、管理業務は請求人が主体となり行いその対価として管理料の支払を受けるものであるため、本件管理料は課税資産の譲渡等の対価に該当すると判断。
地方公共団体が設置する施設の指定管理者の請求人が課税仕入れに係る消費税額の控除漏れがあったとして消費税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が控除漏れは認められるものの施設の管理業務に係る収入(管理料)の額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれておらず、管理業務費用のうち課税仕入れに係るものの額が課税仕入れに係る支払対価の額に含まれないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人がその取消しを求めた事案である。
請求人は物件費で購入した備品等は各協定で市の所有に属するものとされており、請求人が毎月、物件費に係る支払額を積算し、それと同額の管理料を市へ請求して受領したことなどを考慮すると、請求人は管理業務に必要な資金を管理料として市から預かり、市に代わって物件費を支払っていたにすぎないと主張。本件管理料は市からの預り金といえるため、課税資産の譲渡等の対価に当たらないとしている。
審判所は、請求人は指定管理者の指定を受け、各課税期間において条例及び市との間で締結した各協定に基づき請求人所属の職員を従事させて管理業務を行い、自らの預金口座で物件費を支払うなどした上、請求人名で請求して管理料の支払いを受けていることが認められることから、請求人が主体となって管理業務を行いその対価として管理料の支払いを受けるという法形式が選択されていたことは明らかであると指摘。その上で選択した法形式を離れて判断しなければならないような事情はうかがわれないため、本件管理料は管理業務に係る役務の対価として支払われたものであって、課税資産の譲渡等の対価に当たるとの判断を示した。審判所は、管理料と物件費の額は同額であり、請求人が市からの預り金により市を代行して物件費を支払うという法形式を選択する余地が全くなかったとはいえないが、実際にはそれと異なる法形式が選択されたとした。
なお、本件については、通勤手当に係る課税仕入れが共通対応となっていたが、課税資産の譲渡等である管理業務にのみ要する課税仕入れに該当するとされ、控除対象仕入税額の計算が見直されている(一部取消し)。