• 常務の不正行為に伴う売上の計上漏れについて修正申告を行ったことをきっかけとする重加算税の賦課決定の是非が争われた事案の二審で、東京高裁は令和3年9月15日、納税者の控訴を棄却。
  • 東京高裁は、「元常務Aの行為は会社(控訴人)の行為と同視することができる」旨判示。

甲社(控訴人)は、同社の元常務取締役Aが代金額を本来のものより過少にした虚偽の売買契約書を作成し、その差額を自己が支配する株式会社に取得させた行為により売上の計上漏れがあったとして、法人税等の修正申告書を提出したところ、法人税等に係る重加算税の各賦課決定処分を受けた。これに対し、当該修正申告書の提出は「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるなどと主張して、上記各賦課決定処分の取消しを求め提訴した。原審は甲社の請求をいずれも棄却したため、甲社はこれを不服として控訴した。

控訴審では、「本件犯則調査が通則法65条5項の『調査』に当たるか」が争点となったほか、控訴人は、「本件犯則調査と無関係に自発的に修正申告を決意したことは明らか」「Aが、本件各取引において、B社等を売主とした虚偽の内容を記載した契約書を作成し、取引先に合計2億6350万円をB社等の口座に振り込ませるなどという隠蔽仮装行為は、特別背任行為という刑事上の犯罪行為である上、他社の名義で行われているから、控訴人の隠蔽仮装行為と同視することができない」旨主張した。

これに対し東京高裁は、「犯則調査であっても課税調査及びこれを前提とする更正の契機となることがあり、ひいては更正を予知させることがあるから、同条項の趣旨に照らして犯則調査が含まれると解するのが相当である。」「本件修正申告が本件犯則調査であると無関係であるということはできず、控訴人の指摘する事実を前提としても、本件修正申告に係る申告書の提出に関し、更正があるべきことを予知してされたものでないと認定することは困難である。」「控訴人の指摘する点を踏まえても、Aは控訴人の常務取締役の地位にあり、控訴人はAに上記隠蔽仮装行為を実行することができる権限を与えながら、これを防止しなかったのであるから、重加算税制度の趣旨及び目的に照らし、これを控訴人の行為と同視することができるというべきであって、控訴人の上記主張を採用することはできない。」などと判示して、控訴人の主張を斥けた。