• 事後的に事業用の買換えの要件が満たされなかったことが判明した場合の買換資産の取得価額が争点となった事案で、東京地裁は令和3年9月17日、納税者の請求を棄却。
  • 「課税の繰延べという効果を享受した者は、これに係る修正申告書の提出又は更正処分がされない限り、取得価額の引継ぎを行うべき」と判示。

本件は、事業用の買換え(租税特別措置法37条1項)の要件を満たしていなかった買換えにより取得した資産について、所轄税務署長が、本件資産は本件父が租税特別措置法37条1項の規定の適用を受けてその買換資産として取得したものであり、同法37条の3第1項柱書きに規定する「第37条第1項(括弧内略)の規定の適用を受けた者(括弧内略)の買換資産」に該当するから、その取得価額は、同法37条の3第1項柱書き及び同項3号の規定により、いわゆる引継価額で計算すべきであるとして、本件各処分を行ったものである。

原告らは、事業用の買換えにつき措置法37条1項に規定する要件を満たしていないから、本件資産は、同法37条の3第1項柱書きに規定する「第37条第1項(括弧内略)の規定の適用を受けた者(括弧内略)の買換資産」に該当せず、同法37条の3第1項柱書き及び同項3号の規定を適用することはできない旨などを主張して、本件各処分の取消しを求めた。

東京地裁は、次のとおり判示し、原告の請求を斥けている。

「自ら租税特別措置法37条1項の規定を当てはめて同項に規定する要件を満たすとする確定申告書を提出し、これを働かせて同項の規定の適用による課税の繰延べという効果を享受した者は、これに係る修正申告書の提出又は更正処分がされない限り、当該確定申告書の提出時から客観的にみて当該要件を満たしていなかったとしても、その効果を享受していることになるところ、それにもかかわらず、以上で述べた解釈とは異なり、同法37条の3第1項柱書きに規定する『第37条第1項(括弧内略)の規定の適用を受けた者(括弧内略)』には該当せず、同法37条の3第1項の規定が適用されないことになると解すると、(事業用の買換えによる課税の繰延べに対しては、その後に買換資産の譲渡等がされた際に実現されるべきことになるという)同項の規定の趣旨、すなわち繰り延べられたキャピタル・ゲインに対する課税を実現しようとする趣旨に反する結果となるから、この点でも、以上で述べた解釈が採用されるべきものといえる。」