• 非居住者への旅費に関する源泉徴収義務の有無が争われた裁決(令和3年1月14日)。
  • 請求人が海外の音楽家を公演のために日本に招く際に支払った航空券代等は国内源泉所得に該当し、航空会社等に直接支払ったものではないから源泉徴収義務あり。
  • 航空会社に旅費を直接支払う場合と異なる取扱いは不合理といえず。

本件は、コンサートの企画等を行う請求人が海外の音楽家を日本に招く際に、非居住者に対し旅費等に相当する額の金員を支払ったところ、原処分庁が当該金員は非居住者の国内源泉所得に該当するため、請求人に所得税等の源泉徴収義務があるとして納税告知処分を行ったもの。請求人は、当該金員はいずれも非居住者が立替払いした実費を精算したもので課税所得は生じず、請求人に源泉徴収義務はないとして原処分の全部の取消しを求めた。

審判所は、所基通161-19の定めは、人的役務の提供に係る対価の支払者がその提供者に対して必要な旅費、滞在費等を負担する場合において、その費用として支出する金銭等が人的役務を提供する者に対して交付されるものではなく、航空会社、ホテル等に直接支払われ、かつ、その金額が妥当と認められるものであるときは、それによって人的役務の提供者に課税の対象とすべき経済的な利益が生じたとみることは必ずしも妥当ではないことから、国内源泉所得の対象となる人的役務の提供の対価に含まないものとすることができる旨を明らかにしたものであるとした。

その上で審判所は、本件金員は請求人が海外の音楽家を公演のために日本に招く際に音楽家の航空券代等に相当する額として各支払先から請求された金額を支払ったものであり、海外の音楽家による日本国内での公演という人的役務の提供に要する費用を請求人が負担するものであり、国内源泉所得に該当するとの判断を示した。また、金員は請求人が各支払先に支払ったものであり、航空会社等に対して直接支払ったものではないから源泉徴収をしなくて差し支えないものにはならないとした。

請求人は、通達を文理解釈することにより、旅費の実費を公演料と区分して支払うケースにおいて、実質的に航空会社等へ直接支払うケースと同一の内容の支払いであるにもかかわらず異なる取扱いをすることに異論を唱えたが、審判所は、航空会社等に旅費等を直接支払ったか否かで異なる取扱いをすることが不合理であるとはいえないとした。