• 令和2事務年度の所得税調査、新型コロナの影響で実地調査の件数(23,804件)が大幅に減少。
  • 一方で、簡易な接触件数は前事務年度より増加(478,494件)。新型コロナの感染状況を踏まえ、非対面による方法で申告漏れ所得等を把握。

国税庁は11月25日に「令和2事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」を公表した(参照)。所得税等の実地調査の件数は23,804件と、前事務年度の59,683件から大幅に減少した。実地調査のうち「特別調査・一般調査」(高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象とする調査)は18,713件(前事務年度42,601件)、「着眼調査」(申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査)は5,091件(同17,082件)であった。一方で、簡易な接触(文書、電話による連絡又は来署による面接を行い、申告内容を是正するもの)の件数は478,494件(同371,812件)と前事務年度より増加した(参照)。結果として、所得税等の調査等の合計件数は502,298件と、前事務年度(431,495件)より増加している。同庁は、新型コロナの影響により、臨場を伴う実地調査の調査等件数は減少したが、文書や電話での対面によらない方法で申告漏れ所得等の把握を効率的に行う簡易な接触を組み合わせて実施したためであるとしている。

国税庁の主な取組のひとつである富裕層に対する調査状況を見ると、調査件数は2,158件、申告漏れ所得金額は487億円、追徴税額は117億円といずれも前事務年度より減少した一方で、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,259万円と、平成21事務年度以降過去最高の数値となった。大阪局では、租税条約等に基づく情報提供要請により、外国法人から多額の配当を得ている事実を把握したとして約8,900万円(重加算税有)を追徴課税した事例などがあった。

なお、消費税無申告者への実地調査の件数は3,294件、追徴税額は75億円とどちらも前事務年度より減少したが、1件当たりの追徴税額は227億円と増加し、平成23事務年度以降過去最高の数値となった。