• 相続税の実地調査件数は5,106件(対前事務年度比48.0%)と、新型コロナウイルス感染症が影響し、前事務年度から大幅に減少。一方で、大口・悪質な事案を優先して調査を行い、1件当たりの追徴税額は過去10年間で最高の943万円。
  • 簡易な接触を積極的に実施し、接触件数、非違件数、申告漏れ課税価格、追徴税額は過去最高。

国税庁が12月16日に公表した「令和2事務年度における相続税の調査等の状況」によると、令和2事務年度における相続税の実地調査の件数は新型コロナウイルス感染症の影響で5,106件(対前事務年度比48.0%)と減少しており、このうち申告漏れ等の非違件数は4,475件(同49.3%)であることが分かった。申告漏れ課税価格は1,785億円(同58.6%)となっており、追徴税額は482億円(同70.7%)といずれも大幅に減少した。その一方で、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,496万円(同122.0%)、1件当たりの追徴税額は943万円(同147.3%)と大きく増加した。同庁は、実地調査件数は新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少したものの、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査したことで、実地調査1件当たりの追徴税額は過去10年間で最高になったとしている。

実地調査件数が減少する中で、国税庁は簡易な接触(文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正する等の接触)の手法も、実地調査と組み合わせて積極的に実施している。令和2事務年度における相続税の簡易な接触件数は13,634件(対前事務年度比157.9%)で、申告漏れ等の非違件数は3,133件(同137.3%)、申告漏れ課税価格は560億円(同131.1%)、追徴税額は65億円(同154.8%)といずれも大きく増加し、簡易な接触の事績を集計し始めた平成28事務年度以降で最高となった。

無申告事案に対する調査状況を見ると、実地調査の件数は462件(対前事務年度比42.9%)と前事務年度から減少したものの、実地調査1件当たりの追徴税額は1,328万円で、無申告事案に対する実地調査1件当たりの追徴税額の集計を始めた平成21事務年度以降で最高となった。

また、海外資産関連事案に対する調査状況を見ると、実地調査の件数は551件(対前事務年度比54.7%)、申告漏れ等の非違件数は96件(同64.4%)、非違1件当たりの申告漏れ課税価格は3,579万円(同68.9%)といずれも減少している。