- 東京地裁(市原義孝裁判長)は令和4年1月28日、納税者(会社)が課税処分(更正処分及び重加算税賦課決定処分)による納付済み税額の一部の返還を求めた事案について、原告の訴えを棄却する判決。
本件は、所轄税務署長が原告(納税者)に対して行った更正処分及び重加算税の賦課決定処分が無効であるとし、原告が被告(国)に納付済みの税額の一部の返還を求めていた事案である。
原告は、土木建設用機械の販売及び修理等を行う株式会社であり、採掘機械の修理作業工程においては金属スクラップや鉄の切りかすなどの端材(金属スクラップ等)が発生していた。金属スクラップ等の買取り専門業者である株式会社Aが、原告との取引として、金属スクラップ等の仕入れについて記載した「買掛明細問合せ」には各取引の日及びA社が現金で支払った代金の額が記載されていた。
所轄税務署の調査担当者は、原告に対する税務調査で、本件各取引が原告の総勘定元帳等の帳簿書類に記載されておらず、原告の本件各事業年度の収益の額及び本件各課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額に計上されていないことを把握、所轄税務署長は本調査に基づき本件各更正処分等を行った。
原告は令和3年5月19日に本件訴訟を提起したが、原告代表者に別件の業務が生じたことにより、裁判所に(一度は受諾した)期日の変更を申し入れたものの変更とはならず、本件第1回口頭弁論期日に欠席し、当日弁論は終結した(本件は原告が代理人弁護士を選任しない本人訴訟であった)。
市原裁判長は、原告の請求の法的性質は公法上の法律関係に関する不当利得返還請求であると判示した上で、「原告が、本件各更正処分等が無効であることについて具体的な主張・立証をしているとは認められない。」とした。
また、原告は、審査請求において、原告のスクラップ売却の担当者Bの行為が会社の行為と同視されたことに対し、「Bが取締役でなかった期間に行われたスクラップ売却行為は、会社の行為と同視することはできない。」と主張したが、判決は、「そもそも、Bは、スクラップ売却当時、原告の取締役ではなかったものの、従業員として原告に勤務していたのであるから、その間にAが原告の従業員として行った行為は、基本的に原告に帰属するというべきであり、この認定を覆すに足りる証拠はない。」として原告の主張を斥けている。