• 内容確認のため事前に取引先にメール送信される請求書等のドラフトは電帳法の対象になるのかとの疑問が企業の間で発生。
  • 国税庁の解説では、EDI取引について「訂正又は加除のデータ」の保存は不要であり、「確定情報」のみを保存すれば足りるとしていることを踏まえると、ドラフトの保存義務はなし。
 取引先に正式な請求書を送付するに当たり、事前にそのドラフトをメールで送信し、金額や内容について確認を求めるという実務は一般的に行われている。こうした中、企業の間では、この請求書のドラフトを送ったメール(添付ファイルを含む)が、電子帳簿保存法7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)の対象になるのかとの疑問の声が上がっている。同条では、「電子取引」を行った場合に「当該電子取引の取引情報」に係る電磁的記録の保存を求めていることから、請求書のドラフトのメール送信が「電子取引」に該当し、かつ、メール送信した情報が「電子取引の取引情報」に該当すれば電帳法上の保存義務が生じる可能性がある。
 まず請求書のドラフトのメール送信が「電子取引」に該当するかどうかだが、電帳法2条1項5号では、電子取引とは「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」であるとされていることから、ドラフトとはいえ、取引先との間で請求書に関連する文書をメールでやり取りすることが「電子取引」に該当することには疑念の余地はない。
 次に、メール送信した請求書のドラフトに係る情報が「電子取引の取引情報」に該当するかどうかだが、電帳法2条1項5号のカッコ書きでは「取引情報」を「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」と定義している。「その他これらに準ずる書類」まで含めると、請求書のドラフトに係る情報も「取引情報」に該当するように見えなくもない。
 しかし、国税庁は「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」の中で、EDI取引(電子データ交換)について、訂正又は加除のデータの保存は不要であり、「確定データ」のみを保存すれば足りるとしている。この解説を踏まえると、取引先との間で確定版として取り扱われる請求書について保存義務を履行していれば、その性格上、訂正や加除があり得ることを前提としている請求書のドラフトについては保存義務はないと言えよう。