• 請求人が取得した土地が、評価通達24−4に定める広大地に該当するか否かが争われた事例(令和3年8月3日裁決)。
  • 審判所、広大地の判定に当たり開発許可面積基準を指標とすることに合理性はあるが、評価通達には面積基準は定められておらず、一律に判定することはできないと判断。更正処分の全部を取り消し。

本件は、請求人が相続により取得した土地が、(旧)財産評価基本通達24−4《広大地の評価》(以下「評価通達24−4」)に定める広大地に該当するか否かが争われた事案である。請求人は、相続により取得した土地は広大地に該当するとして相続税の更正の請求を行ったが、原処分庁は、①土地は共同住宅の敷地として利用されており、現に有効利用されていること、②その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく地積が広大かについては、指標となる各自治体が定める開発許可を要する面積基準(開発許可面積基準)を満たすか否かによって判断すべきであること、③土地は路地状開発をすることができ、公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことを理由に、広大地には該当しないとして、その他の部分のみを認容する更正処分を行ったため、請求人がその全部の取り消しを求めていた。

評価通達24−4では、①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること、②都市計画法4条12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであること、③大規模工場用地に該当するものでないこと及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものでないことをいずれも満たす場合に、その評価対象の土地を広大地とした上で、減額補正を行う旨を定めている。これを踏まえ審判所は、本件土地が評価通達24−4に定める「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地」に該当するか否かを検討することとした。

審判所に提出された証拠資料等によれば、土地の周辺地域における標準的な宅地の使用は戸建住宅の敷地としての利用であり、共同住宅の敷地として利用されていた本件土地については、周辺地域と同様の標準的な宅地の使用ということはできないから、現に宅地として有効利用されているとは認められないと判断。周辺地域における標準的な宅地の地積と比較しても、本件土地が「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」に該当すると認められるとした。

また、原処分庁は、各地域の開発許可面積基準を満たすか否かで広大地に該当するかを判断すべきと主張しており、実際に本件土地の地積は993.37㎡と、a市の開発許可面積基準(1,000㎡)をわずかに下回っていた。この点、審判所は、評価通達24−4に開発許可を前提とした文言はなく、開発許可面積基準を指標とすることに合理性はあると認めたものの、当該基準を満たさないことをもって直ちに広大地に該当しないとすることはできないとの判断を示した。

そのほか、原処分庁は、戸建住宅の分譲を行うとしても、本件土地は路地状開発をすることが合理的であると主張するが(図表1参照)、審判所は、本件土地の経済的に最も合理的な使用は請求人の主張する道路を開設して戸建住宅の敷地とする開発を行うことである(図表2参照)との判断を示している。

以上の理由から、審判所は、本件土地は広大地に該当し、評価通達24−4に定める評価方法に従って評価すべきであるとして各更正処分の全部を取消した。

なお、評価通達24−4は平成29年度税制改正大綱を踏まえて廃止されており、「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されている。広大地の評価が適用されるのは、課税時期が平成29年12月31日以前の場合となる。