- インドの外国法人に支払った共同研究費用が「技術上の役務に対する料金」に該当するか争われた裁決(令和3年2月16日)。
- 審判所は、国内源泉所得に該当すると判断し、請求人の主張を棄却。また、税務相談の照会結果と原処分が異なるも、税務相談の助言は税務署の公式見解とならず。
本件は、請求人がインドの外国法人に対して共同研究契約に基づき共同研究費用等を支払っていたところ、原処分庁が、共同研究費用等は日印租税条約上の「技術上の役務に対する料金」に当たり、国内源泉所得に該当するとして、請求人に対し、源泉所得税等の納税告知処分等を行ったもの。請求人は、共同研究契約は共同研究のノウハウや研究データ、創出された化合物等、契約に基づくすべての成果物を請求人に帰属させることを意図して締結されたものであるから、無形資産の譲渡対価というべきであり、日印租税条約13条5項の「譲渡によって取得する収益」に該当するとし、原処分の取消しを求めた。
審判所は、契約書によれば、インド法人は共同研究における役割や遂行すべき業務として、研究プログラム及び研究計画を策定し、各契約年次において一定の人員を投下して研究計画に沿った研究活動を遂行するとされており、インド法人が人的役務の提供を求められていたことは明らかであり、また、研究活動中は、各契約年次の四半期ごとに研究対価が分割して支払われることからすると、研究対価は、基本的に研究活動の成果にかかわらず、研究活動の期間に対応して支払われるものであったと認められると指摘。したがって、研究対価は、日印租税条約12条4項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当し、請求人は源泉徴収義務を負うとの判断を示した。
また、本件では、請求人が共同研究費用等に係る源泉徴収の取扱いについて原処分庁に照会したところ、担当者から源泉徴収の必要はないとの回答を受けていたことから、原処分は信義則に反して違法であるかについても争点となっていた。この点について審判所は、税務相談は、相談者の一方的な申立てに基づきその申立ての範囲内で一応の判断を示すものであるから、税務相談における助言が税務署長等の権限のある者の公式の見解の表明と受け取られるような特段の事情がない限り信頼の基礎となる公的見解の表示には当たらないと解されるとした上で、本件回答も、請求人からの相談に対してその相談の内容の範囲内で一応の判断を示したものであり、公的見解が表示されたとはいえないとの判断を示した。