- 賃貸不動産の売却代金に含まれた賃貸借契約の解約金相当額の所得区分が争われた裁決(令和3年10月8日公表裁決)。
- 審判所は、解約金相当額は賃貸不動産の貸付けに起因して発生した所得であり、不動産所得に該当すると判断。ただし、臨時所得であり、平均課税の適用対象になるとし、原処分の一部を取消し。
本件は、賃貸不動産を売却した請求人が、賃貸不動産の売却代金とされた金額のうち賃貸借契約の解約金相当額について、不動産所得ではなく譲渡所得に該当するとして更正の請求をしたところ、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その全部の取消しを求めた事案である。
請求人は、賃貸不動産を売却して信用金庫に対する借入金を返済するため、賃貸借契約を中途解約する意向を賃借人に示したところ、すでに社宅に供していなかった賃借人は請求人の意向に応じることになった。その後、請求人は賃貸不動産をXに売却し、賃借人は賃貸借契約に基づく解約金を信用金庫に支払っている。
審判所は、賃貸借契約には15年の期間の定めがあり、中途解約された場合、賃借人は残りの賃貸借期間分の賃料を中途解約金として支払う義務があることなどからすると、本件売買契約は、売買代金のすべてを不動産の譲渡対価とする趣旨のものであったとは解し難いとした。そして、売買契約では、賃貸借契約に基づく賃貸人の地位も移転されているところ、①不動産賃貸借契約に基づく賃貸人の地位が、不動産所有権とは別個の債権契約上の地位であり、不動産所有権から離れて譲渡可能なものであること、②売買契約の締結前に、賃貸借契約が合意解約され中途解約金が支払われることが確定していた本件では、「賃貸人の地位」の交換価値が、不動産そのものの交換価値から独立した「解約金相当額を受領する地位」の価値として客観的に把握できることからすれば、売買契約は、解約金相当額の部分を賃貸借契約に基づく賃貸人の地位の移転に対する反対給付として定める趣旨のものと解するのが相当であるとした。したがって、解約金相当額は、「賃貸人の地位」の譲渡の対価として受領した金額であり、賃貸不動産の貸付けに起因して発生した所得であるため、不動産所得に該当するとして、請求人の主張を斥けた。
一方、解約金相当額は、賃貸借契約に基づく賃料の3年分を上回る金額からすると、審判所は、解約金相当額に係る所得は臨時所得であり、平均課税の適用対象となるとして、原処分の一部を取り消した。