• 輸出物品販売場で販売したとする宝石の課税仕入れがあったか否かが争われた事案で、東京地裁は課税仕入れの事実はなく外形を整えたと判断し、納税者敗訴(令和4年7月15日判決)。
 本件は、宝石等の販売、輸出入等を行う法人4社(原告)が、輸出物品販売場で販売したとする宝石の仕入代金を、課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の確定申告をしたところ、処分行政庁から当該課税仕入れはなかったとして更正処分等を受けたことから、処分の取消しを求めていた事案である。
 東京地裁は、原告4社が販売した宝石は、X社がY社から仕入れて原告らに販売したものであるとの原告らの主張を踏まえ、まず、X社がY社から本件宝石を仕入れていた事実の有無を検討した。そして、Y社の仕入先であるタイ法人の存在に疑義があること、Y社・タイ法人間の預り票には、高額な宝石の取引であるにもかかわらず、品質についての記載がなく、全証拠によってもY社がその品質を確認していた事情は認められない点などを指摘した。
 続いて、Y社からX社への納品についても、①X社・Y社間の貸出伝票とX社・原告ら間の貸出伝票との間に整合性がなく不自然であること、②X社の代表者(原告A社の代表者でもある)がY社代表者からビニール袋に入った状態で宝石の納品を受け、ルーペで確認していたという高額な宝石の取引らしからぬ状況、③X社がY社に支払うべき仕入代金についても、支払原資の供給方法や支払方法についてのX社兼A社代表者の供述が合理的な理由もなく変遷していること、金銭の移動や経理処理等に係る証拠が一切ないことなどから、X社がY社から本件宝石を仕入れていた事実は認められないと判断した。
 また東京地裁は、原告ら4社の輸出物品販売場における本件宝石の販売の事実についても、①購入者とされる中国人ツアー客の多くが、行程上、輸出物品販売場を訪れることが不可能であったこと、②税関長等に提出される購入記録表がないこと、③原告らが提出を受けたとする購入者誓約書の記載に誤りや不自然な点が多いこと、④60%を超える返品率があまりにも高く不自然であることなどから、原告らが本件販売場において本件購入者に対して本件宝石を販売した事実は認められないとした。
 以上の点を踏まえ、東京地裁は、実際には当該課税仕入れはなく、原告らにおいて本件納品書を作成するなどしてその外形を整えたものにとどまると結論付け、納税者の請求を棄却した。