- 令和3年度の新規発生滞納額は7,527億円。新型コロナの影響による申告納付期限の延長などの影響で滞納の発生時期が後ろ倒しとなり、前年度より1,611億円増加。
- 滞納整理にかかる原告訴訟は115件を提起。国側敗訴は0件。滞納処分免脱罪では4件、7人員の事案を告発。
国税庁は8月5日、「令和3年度租税滞納状況について」を公表した。令和3年度の新規発生滞納額は7,527億円と、前年度より1,611億円(+27.2%)増加した。同庁によると、新型コロナの影響により申告所得税等の申告・納付期限の延長があったため、口座振替で引き落としができなかったものについて、滞納の発生時期が令和2年度から令和3年度に後ろ倒しとなったことや、特例猶予について猶予期間中は滞納として計上していなかったこと、また、特例猶予期間終了までに一部が納付されず令和3年度の滞納として発生したことなどが、増加の主な要因であるとしている。滞納発生割合は「1.06%」と、平成27年度以来6年ぶりに増加に転じたが、引き続き低水準で推移している。
滞納整理済額は6,956億円となっており、前年度より1,772億円(+34.2%)増加した。国税庁は、滞納の発生が令和2年度から令和3年度に繰り越されたものがあるため、新規発生滞納額が増加したことに伴うものであり、その相当額が令和3年度中に納税されたことで整理済額が増加したとしている。また、新規発生滞納額(7,527億円)を整理済額が上回らなかったため、滞納整理中のものの額(滞納残高)は8,857億円と、前年度より571億円(+6.9%)増加した。
国税庁では通常の滞納整理の手法では処理進展が図れない事案について、差押債権取立訴訟や、詐害行為取消訴訟等の原告訴訟を提起するなどの、訴訟手法を活用した滞納整理にも取り組んでいる。令和3年度においては115件の原告訴訟を提起し、終結は109件となっている。このうち、国側が敗訴した事案は0件であった。
このほか、財産の隠蔽等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行っており、令和3年度は4件、7人員(個人及び法人)の事案を告発した。同庁によると、7人員のうち5人員が起訴されており、刑が確定したのは3人員であるとした。裁判所は刑が確定した3人員にそれぞれ、懲役1年6月執行猶予3年(罰金50万円の併科)、懲役1年執行猶予3年、罰金50万円の有罪判決を下している。