- 建築業を営む法人の外注費の損金算入の可否が争われていた事案で、納税者は、損金算入が認められなかった外注費に対応する工事収入も架空であり益金ではないと主張するも認められず(東京高裁令和4年8月25日判決)。
本件は、建築工事の請負、設計等を行う法人M社の外注費の一部の損金算入の可否が争われた事案である。
一審の宇都宮地裁は、「損金の額に算入することができる支出は、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならず、支出のうち、使途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、損金の額に算入することができないと言うべきである」との解釈を示した上で、一部の外注費について「①本来支出の相手方が記載されるべき総勘定元帳の摘要欄は空欄となっていること、②当該外注費の実在及び業務関連性の裏付けとなるべき契約書、請書、請求書、領収書、見積書、工事台帳、工程表、作業日報などの客観的な書類が存在しないこと」、また別の外注費については、「総勘定元帳の適用欄に記載されている法人の住所が存在しないこと」などを指摘し、「原告において、当該外注費の存在及び原告の業務との関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な立証は行われていない」として、当該外注費が損金の額に算入すべき金額には当たらないとの判断を下していた。
一方、原告M社は一審で、損金算入が認められなかった外注費に対応する工事収入(関連法人A社に対するもの)もまた架空であったとして、益金に算入すべきでないと主張していたが、当該主張も認められなかった。
M社は控訴審における補足的主張として、「本件関連法人A社の支出金を損金として経理処理するために控訴人(M社)に対する外注加工費として計上し、控訴人において架空の売上げを立てたもので、益金は存在しない」などと主張したが、東京高裁は「M社は一審でグループとしての売上げを多く見せるために、本件関連法人A社の外注費の支払を、控訴人に対する外注加工費として控訴人の工事収入とし、同額の外注加工費を損金として立てていた旨主張していたのに対し、当審において、上記のとおり本件関連法人A社及び控訴人双方にとっての架空計上である旨その主張を変遷させているものであって、この点につき何ら合理的理由は説明されていない」などとして、その主張を認めず、一審の判断を支持している。