• 令和3事務年度の所得税調査、実地調査の件数(31,407件)は回復傾向にあるが、新型コロナの影響で依然として低水準。
  • 免税店制度の悪用事案について新たに積極的に取り組み、30件の実地調査を実施。

国税庁が11月24日に公表した「令和3事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税等の実地調査の件数が31,407件と前事務年度(23,804件)から増加したことが明らかとなった。実地調査のうち、特別・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれる事案に対して相当の日数を確保して行う調査)では24,067件(前事務年度18,713件)、着眼調査(申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査)は7,340件(同5,091件)であった。また、簡易な接触(文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するもの)の件数も568,340件と前事務年度の478,494件から増加している。同庁によると、実地調査の件数は回復傾向にあるものの、新型コロナの影響で依然として低水準であるとしている。

また、譲渡所得の調査等の状況では、16,714件の調査が行われ、そのうち申告漏れ等のあった件数は13,066件であった。申告漏れ所得金額は1,384億円となっている。

消費税(個人事業者)への実地調査の件数は16,908件(前事務年度11,076件)で、追徴税額は241億円(同133億円)といずれも増加している。また、1件当たりの追徴税額は143億円(同120億円)となっており、平成21事務年度以降で過去最高となった。同庁では、無申告等の調査を重点的に実施するなどして、追徴税額の総額は新型コロナの影響を受ける前の水準に近接しているとした。また、輸出物品販売場制度の悪用事案について、新たに積極的に取り組み、令和3事務年度においては30件(同2件)実地調査を実施。即時徴収の対象となった税額の総額は12億円に上っている。

 国税庁の主な取り組みのひとつである富裕層に対する調査状況を見ると、調査件数は2,227件(前事務年度2,158件)であった。また、1件当たりの申告漏れ所得金額が3,767万円(同2,259万円)、1件当たりの追徴税額は1,067万円(同543万円)でどちらも過去最高となっている。大阪局では、CRS情報を活用し、海外金融機関から得た利息等の漏れを把握するとともに、外国法人の留保利益についてCFC課税を行ったとして、約8億1,400万円(重加算税無)を追徴課税した事例などがあった。