• 請求人が当初から過少申告を意図していたか争われた裁決(令和4年3月17日裁決)。審判所は、請求人の所得の状況等からすれば、過少申告を行うべき積極的な動機は見いだしにくいとし、原処分を取消し。

本件は、請求人が原処分庁の調査結果に基づき、減価償却費等を損金の額に計上した時期に誤りがあったとして法人税等の修正申告を行い、その後に修正申告には少額の減価償却資産に係る取得価額の損金算入漏れがあったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が修正申告について事実の隠蔽又は仮装があるとして重加算税等の賦課決定処分等を行ったことから、原処分の取消しを求めた事案である。

請求人が事務所家具を購入した日の属する事業年度の事業の用に供したか否かに関し、原処分庁は、事務所家具が納品された1階事務室は、請求人代表者の配偶者が経営するクリニックの副院長室であり、請求人の社長室ではないため、事務所家具は本件事業年度において事業の用に供したとはいえないとしたが、審判所は、①請求人代表者はクリニックの副院長を兼務していること、②クリニック移転に伴い、クリニックの1階部分の引渡しがされた当初、1階事務室は請求人の社長室として使用されていなかった可能性があるものの、本件事業年度中には請求人の社長室として使用されていたと認められることなどから、当該事務所家具は、本件事業年度において事業の用に供されていたと認められるとした。

また、原処分庁は、請求人が事業年度末に購入した事務所家具に係る取得価額及び減価償却費を当該事業年度の損金の額に算入したことについて、請求人は、当初から過少に申告することを意図していたものであり、請求人が顧問税理士に事務所家具に係る納品書等を渡さず、事務所家具の納品日等の具体的内容も伝えなかったことは、請求人が当初から過少に申告する意図を有していたことをうかがい得る特段の行動に当たるとして、重加算税の賦課要件を満たすと主張した。しかし、審判所は、請求人の過少申告行為に係る所得金額やこれにより納付すべき税額の差額、請求人の所得の状況等からすれば、請求人に過少申告を行うべき積極的な動機は見いだしがたく、また、請求人は、経理等に関する知識は乏しく、顧問税理士から単に依頼や確認をされなかったため納品書等を当該顧問税理士に渡さなかったにすぎないと認められ、これをもって過少申告を意図した行動であるとはいえないとし、隠蔽又は仮装の行為があったということはできないとの判断を示し、原処分の全部を取り消した。