• 相続税の実地調査の件数は6,317件(対前事務年度比+23.7%)と、新型コロナの影響で大幅に減少した前事務年度からは回復傾向にあるものの、依然低水準。一方、大型・悪質事案を優先した結果、1件当たりの申告漏れ課税価格は3,530万円と過去10年で最高。

国税庁が12月16日に公表した「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査の件数は6,317件(対前事務年度比+23.7%)と、増加したことが分かった。このうち申告漏れ等の非違件数は5,532件(同+23.6%)となっており、申告漏れ課税価格の2,230億円(同+24.9%)や、追徴税額の560億円(同+16.2%)についても増加している。また、1件当たりの申告漏れ課税価格は3,530万円(同+1.0%)と過去10年間で最高となり、1件当たりの追徴税額については886万円(同▲6.1%)で、過去最高だった令和2事務年度に次いで2番目に高い金額であった。同庁は、調査件数は回復傾向にあるものの、新型コロナの影響により依然として低水準であるとした一方で、大口・悪質事案を優先したことで、1件当たりの追徴税額が高額になったとしている。

国税庁では文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正するなどの簡易な接触も、実地調査と組み合わせて積極的に活用している。令和3事務年度における簡易な接触件数は、14,730件(対前事務年度比+8.0%)で、申告漏れ等の非違件数は3,638件(同+16.1%)、申告漏れ課税価格は630億円(同+12.5%)、追徴税額の合計は69億円(同+7.2%)と増加し、いずれも簡易な接触の集計を始めた平成28事務年度以降で最高となった。

海外資産関連事案に対する状況を見てみると、実地調査の件数は660件(対前事務年度比+19.8%)、申告漏れ等の非違件数は115件(同+19.8%)、非違1件当たりの海外資産に係る申告漏れ課税価格は4,869万円(同+36.1%)と、いずれも減少した令和2事務年度から増加に転じている。大阪局では、CRS情報により、被相続人名義の多額の海外預金と海外不動産の申告除外を把握したとして、調査対象者に約6億円(重加算税有)を追徴課税した事例があった(増差課税価格:約10億6,000万円)。

また、無申告事案に対する実地調査の件数は576件(対前事務年度比+24.7%)、実地調査1件当たりの追徴税額は1,293万円(同▲2.7%)となっており、実地調査1件当たりの追徴税額は令和2事務年度に次いで2番目に高額であった。