- 外形標準課税、「資本金1億円超」という現行の適用基準を維持。外形標準課税の対象外となっている「実質的に大規模な法人」をターゲットに、制度の見直し検討へ。
減資や組織再編を利用した“外形外し”はかねてから問題とされてきたが、令和5年度税制改正では、「外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人」を対象にした制度の見直しが示唆されるにとどまっている(与党大綱18頁)。
外形標準課税の見直しは、総務省が昨年8月に設置した「地方法人課税に関する検討会」でもテーマとなったが、同検討会が11月に公表した「中間整理」の結論部分は「対応策の具体化に向けて検討を継続する」とされ、これが令和5年度税制改正での「見送り」につながったものと考えられる。実際、中間整理では、「……小規模な企業への影響に配慮するとともに、必要以上に多くの法人に制度見直しの影響が及ばないよう、現行基準(「資本金1億円超」の法人)を基本的に維持しつつ、公平性等の観点から、減資・組織再編の動きに対応するための追加的な基準を付け加えることが考えられる」とあり、この部分は与党大綱の上記記述と概ね方向性が一致する。
減資への対応について、中間整理には「資本金を資本剰余金に振り替える項目振替型減資への対応を中心として検討」とあるが、資本金等の額は計算が複雑であることに加え、自己株式の取得を行う場合には減少するため、納税者による操作の可能性は否定できない。平成27年度改正では、資本割の課税ベースの計算上、資本金等の額が「資本金+資本準備金の額」を下回る場合、「資本金+資本準備金」を用いることとされたが、この方式を外形標準課税の適用判定に組み込めば、判定プロセスはかなり複雑になり、付加価値割の計算等、実務負担の軽減を求める声にも反する。組織再編(典型的には「分社化による持株会社+事業会社」への再編)への対応としては、グループ法人税制を参考に、100%支配関係のあるグループについては、親法人が大法人であれば、子法人が資本金1億円以下であっても大法人とみなして外形標準課税を適用する案もあるが、分社化以外の通常のグループ会社も捕捉しかねない、外形標準課税の対象法人が増えすぎないか、都道府県がグループの資本関係を適時に把握できるのか、“100%外し”の可能性など、様々な課題が指摘されている。
このように制度改正に向け課題は多いが、大綱に「制度的な見直しを検討する」と明記された以上、今後何らかの改正が行われる可能性は高いだろう。