• 東京地裁、取引の実質が金銭消費貸借契約であり課税取引には当たらないとの原告の主張を認めるも、原告による更正の請求の対象となる取引等の額の立証がないため、更正の請求は認めず(東京地裁令和5年2月21日判決)。

いわゆるオーナー商法(預託商法)で多額の資金を集め、経営破綻した「ケフィア事業振興会」による詐欺事件は、2020年に元代表らが逮捕されたことや被害総額が巨額であったことから社会問題となったが、本件は、同社の破産管財人である原告が行った法人税等及び消費税等の更正の請求が認められるかが争われた事案である。

同社の「オーナー制度」による取引には2つのコース、具体的には、顧客との間で買戻特約付売買契約に係る契約書を作成し、法形式上、対象商品の所有権を買主(顧客)に移転し、決められた日に売買代金に一定額を加えた金額で買い戻すという形態のAコースと、実際に対象商品が買主に届けられるBコースがあった。

原告は、このうちAコースについては、実態は金銭消費貸借契約に基づく顧客からの預り金であるのに、出資法などの関係法令に違反していないよう装うため、会計上買戻特約付き売買契約であるかのように処理したものであるとして、本件取引は金銭消費貸借契約であって課税取引には当たらないと主張した。

東京地裁は、事実関係から、本件取引の実態は、顧客が一定の金員を破産会社に払い、破産会社が顧客に対して6か月で1割程度となる払込金と買戻予定額の差額を利息のように支払うというものであり、金銭消費貸借契約に極めて類似した実態を持つ契約であったと指摘。対象となる商品を破産会社が準備していたかも疑わしいものであり、むしろ、買戻特約付売買契約という法形式を用いることにより、金銭消費貸借契約という法形式を用いることによる出資法への抵触といった不都合を破産会社が回避しようとしたものと考えるのが合理的であるとした。その結果、本件取引の実質が金銭消費貸借契約にほかならないとする原告の主張には理由があると認めた。

しかし、更正の請求の対象となる本件取引等の額については、原告が、オーナー制度全体の取引額からBコース分を差し引けば算出できると主張したものの、Bコースの取引量が記録されているとするデータベースの正確性は認められないと指摘。更正の請求の対象となる本件取引等の額について、原告による立証があるとはいえず不明であるとして、更正の請求は認められないとの結論を下した。