• シンガポール所在の法人の主たる事業が株式等の保有であったか争われた裁決(東裁(所)令3−119)。
  • 審判所、法人のコンサルティング事業に係る収入金額の占める割合が約9.73%にすぎないことなどを勘案すれば、法人の主たる事業は株式等の保有であり、事業基準を満たさず外国子会社合算税制の適用があると判断。

本件は、原処分庁が、請求人に係る租税特別措置法上の特定外国子会社等の主たる事業は株式等の保有であり、事業基準を満たしていないことから、外国子会社合算税制の適用があるとし、更正処分等を行ったことから、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。請求人は、シンガポールに所在する本件法人には当事業年度に配当収入が生じているが、法人及び請求人各グループ会社の組織再編の中で一時的に生じたにすぎず、本件法人の主たる事業は株式等の保有ではなく、コンサルティング事業であるなどと主張した。

審判所は、特定外国子会社等が株式等の保有を含め複数の事業を営む場合、そのいずれの事業が「主たる事業」であるかの判定は、特定外国子会社等の当該事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定することが相当であり、特定外国子会社等におけるそれぞれの事業活動によって得られた収入金額又は所得金額、事業活動に要する使用人の数、事務所、店舗、工場その他の固定施設の状況等を総合的に勘案して判定するのが相当であるとの見解を示した。

その上で、審判所は、本件法人の当事業年度における総収入金額のうち株式等の保有に係る収入金額の占める割合は85%を超える一方で、コンサルティング事業に係る収入金額の占める割合は約9.73%にすぎず、また、法人に係る業務の従事者は1名のみで、コンサルティング事業に係る業務に専従する従業員はなく、事務所等の固定施設を有していなかったと指摘。加えて、法人におけるコンサルティング事業は、グループ会社等から業務を受託し、その一部をグループ会社等に再委託するというものであり、法人における株式等の保有に係る事業に附随したものと評価できるとした。このため、審判所は、これらの事情を総合的に勘案すれば、当事業年度における本件法人の主たる事業は、コンサルティング事業ではなく株式等の保有であったと認めるのが相当であり、本件法人は、当事業年度において事業基準を満たさないとし、本件法人につき外国子会社合算税制の適用があるとの判断を示し、請求人の請求を棄却した。