- 法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対する役員給与の額が、形式基準による不相当に高額な部分があるか争われた事案(仙裁(法)令4−1)。
- 審判所、請求人の代表取締役が作成した書面に記載された役員報酬の金額は、取締役に対する給与の積算根拠にすぎないと判断。役員給与の額は不相当に高額と認めず。
本件は、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対する役員給与について、形式基準による不相当に高額な部分があるか争われたもの。原処分庁は、代表取締役が作成した「取締役の報酬金額に対する決定書」(以下「決定書」)に記載された報酬金額は、形式基準限度額(法人税法施行令70条1号ロ)に当たり、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対してこれを超えて支給された金額は不相当に高額な役員給与であるとして損金の額に算入できないなどとして更正処分等を行ったことから、請求人(同族会社)が当該給与の額に不相当に高額な部分はないと主張して原処分の一部の取消しを求めていたものである。
請求人においては、第1回定時社員総会で取締役の役員報酬額を年額50,000,000円以内と決定し、各取締役の受けるべき役員報酬の額の決定については、代表取締役に一任していた。その上で、代表取締役は役員給与の支給額に係る決定内容を明らかにするため、決定書を作成するとともに、請求人においては、従来から使用人兼務役員は労働保険に加入しており、労働保険料の算定に当たって取締役分と使用人分とに区分して申請する必要があったことから、支給明細書を作成していた。
審判所は、代表取締役が役員給与の支給額に係る決定内容を決定書と支給明細書とに分けて作成していたのは、取締役が法人税法上の使用人兼務役員に該当しないとしても、使用人としての職務は継続して行っており、労働保険等の取扱上は使用人兼務役員に該当していることから、決定書に取締役の使用人分を記載することは適当ではないと判断したものと認められるとした。
したがって、これらの書面の作成経緯によれば、取締役に対する役員給与は、取締役分と使用人分を勘案し、その合計額を支給額として決定したと認められることから、決定書に記載された金額は取締役に対する給与額の積算根拠にすぎず、取締役の職務内容等に照らしても役員給与の額が不相当に高額であるとは認められないとして、審判所は、原処分の全部又は一部を取り消した。