• 請求人が取得したとする錦鯉がみなし役員の個人資産に該当するか否かが争われた裁決(東裁(法・諸)令3第80号)。
  • 審判所、資産(錦鯉)の購入、管理及び処分の状況、請求人における事業計画に照らせば、本件資産はみなし役員の個人資産に該当。資産の購入代金は、みなし役員に対する経済的利益供与と判断。

本件は請求人(建物内外の保守・清掃業務等を行う法人)が取得した錦鯉について、原処分庁が、錦鯉は請求人のいわゆるみなし役員である実質経営者が所有する個人資産であり、錦鯉に係る購入代金及び費用は、みなし役員に対する給与(賞与)に該当するため、当該費用は損金の額に算入できないなどとして、更正処分等を行ったことから、請求人が、錦鯉はみなし役員の個人資産には該当しないとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。本件におけるみなし役員(法法2条15号)は、請求人の代表取締役を務めるAの父で、かつて請求人の取締役に就任しており、取締役を辞任してからも請求人の経営上の決定権、人事権等を有しており、請求人を実質的に支配していた。

審判所は、錦鯉がみなし役員に帰属するか否かは、①錦鯉の取得(取引)の経緯・状況、②錦鯉の管理等の状況、③錦鯉の収益、処分の状況、④錦鯉に係る販売等の事業性及び事業計画の有無・内容等の諸事情に照らして実質的に判断すべきであるとした。

その上で、上記①に関しては、契約書には買主として請求人名のほかにみなし役員の氏名が併記されていること、及び錦鯉の購入はすべてみなし役員の判断により行われ、請求人の従業員等は関与していなかったこと、②の管理等の状況では、錦鯉はみなし役員の住居である住宅の敷地内の池に保有・管理され、錦鯉に関する主な作業はみなし役員が行っていたこと、③に関しては、請求人の各事業年度において錦鯉に係る収入の計上がなく、営利を目的とする法人において、高価というべき固定資産につき、社内の稟議や役員会の決議等の社内における意思決定を経ずに、法人と何ら取引関係のない者に資産を無償で贈与することは通常で考えられないこと、④の事業性については、商業登記上、鯉の保有、生産、育成及び売買を事業の目的としていなかったことなどからすると、錦鯉はみなし役員の個人資産に該当するとの見解を示した。したがって、審判所は、錦鯉の購入代金及び管理等の費用は、請求人がみなし役員に対して経済的利益を供与したものであり、役員給与に該当するとの判断を示した。