- マンションを購入した際に売主から交付を受けた商品券が経済的利益に該当するか争われた裁決(東裁(所)令4第75号)。
- 審判所、商品券の交付は経済的利益が生じているとしたが、同利益は営利を目的とする継続的な行為から生じたものとは認められないなどとし、一時所得に該当すると判断。原処分の全部を取消し。
マンションなどの住宅を購入する際に値下げ交渉をすることは一般的だが、なかには、売買価格を減額する代わりに、家具等のサービスや諸費用等の負担を行ったり、商品券を交付することにより値引の対応を行うケースもあるようだ。
今回、争われた裁決は、請求人が居住用マンションを購入した際に売主から交付を受けた商品券が「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当するか、また、経済的利益に該当した場合の商品券等の所得区分を問うものとなっている。
請求人は、マンションの専有部分(本件物件)に係る売買契約書及び売買契約書と併せて作成された覚書の内容並びに売買契約の締結に至る経緯等を総合的に判断すれば、覚書に基づき商品券の交付等を受けたことは、物件の売買代金の支払と対価関係にあることから、「金銭以外の物又は権利その他経済的利益」(所法36条1項括弧書)は生じていないと主張した。一方、原処分庁は、商品券の交付等を受けたことで経済的利益が生じており、雑所得に該当するとした。
審判所は、売買契約の締結及び覚書による合意に至る経緯や売買契約書及び覚書の内容からすれば、売買の目的物は本件物件であり、商品券の交付等は、売買の目的物とは別に無償で提供されたものと認められると指摘。したがって、請求人には、商品券の交付等に係る経済的価値の流入があったというべきであり、「金銭以外の物又は権利その他経済的利益」が生じているとした。
その上で審判所は、請求人は本件物件を購入するとともに、売主から無償で商品券の交付等を受けたに過ぎず、経済的利益は、営利を目的とする継続的な行為から生じたものとは認められないとしたほか、商品券の交付等に係る給付は、請求人の何らかの具体的な役務行為に関連してなされたもの、又は抽象的若しくは一般的な役務行為に密接に関連してされたものとも認められないと指摘。したがって、審判所は、経済的利益は雑所得ではなく、一時所得に該当するとの判断を示し、原処分の全部を取り消した。