- 総務省、R6年改正で外形標準課税の見直し検討へ。課税対象として、期末の「資本金+資本剰余金」が1億円を有意に超える法人を想定。大法人による完全支配関係がある法人等は資本金1億円以下でも課税対象とする案も浮上するも、外形標準課税逃れの意図がない中で100%子会社が課税対象になりかねないとして、大企業から反対の声。
減資や分社化等の組織再編により外形標準課税の対象法人が減少する中、令和5年度与党税制改正大綱には「外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人を対象に、制度的な見直しを検討する」との一文が盛り込まれ、本年6月の政府税調中期答申でも同趣旨の表現が繰り返されている。こうした中、総務省はできれば令和6年度税制改正で外形標準課税の見直しを実現するべく、10月12日より「地方法人課税に関する検討会」を再開した。
現時点で有力なのは、会計上の期末の「資本金+資本剰余金」の額が1億円を“有意に”超える場合には外形標準課税の対象とする案だ。「資本金+資本剰余金」に類似の概念として、「資本金等の額」も検討されているが、自己株式の取得によって減少するなど納税者による操作が行われる可能性がある上、組織再編等の場合の加算・減算調整など複雑さもあり、本命とはなっていない模様。
仮に「資本金+資本剰余金」が採用された場合、スタートアップへの影響を懸念する声もある。スタートアップでは、増資後、資本金を(資本剰余金を経由して)利益剰余金の赤字額に充当しても資本剰余金が一定額余ることがあり、この場合、思わぬ形で外形標準課税の対象になりかねない。スタートアップ側からは、免税も視野に入れた大胆な救済措置を求める声が上がっている。
また、分社化等による外形標準課税逃れ対策として、大法人との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等については、資本金1億円以下でも外形標準課税の対象とする案がある。法人税では大法人の定義は資本金5億円だが、外形標準課税の適用関係を判定する場合には、これよりも大きい額が検討されることになろう。ただ、分社化への対応案については、特に大企業から反対の声が聞かれる。外形標準課税逃れの意図も分社化等の組織再編の経緯もなく、たまたま100%子会社が資本金1億円以下であるケースは数多くあるからだ。こうした中、「新制度の施行前の100%子会社については免除とすべきではないか」等の意見も出ている。