- 相続税の実地調査と簡易な接触の件数を合わせた調査等合計件数は、過去5年間で最高。新型コロナ前の水準を上回る。
- 令和4年事務年度以降、評価通達6項の適用は9件と増加傾向。国税庁、租税負担の均衡を損なう事案には評価通達6項を適用へ。
国税庁が12月12日に公表した「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査の件数は8,196件(前事務年度+29.7%)と前事務年度から増加し、申告漏れの非違件数7,036件(同+27.2%)、申告漏れ課税価格2,630億円(同+17.9%)、追徴税額の合計669億円(同+19.5%)についても、前事務年度から増加したことが分かった。
文書、電話などによる連絡又は来署依頼による面接により、申告漏れ、計算誤り等を是正する簡易な接触については、接触件数が1万5,004件(同+1.9%)、申告漏れの非違件数は3,685件(同+1.3%)、申告漏れ課税価格は686億円(同+8.9%)、追徴税額の合計は87億円(同+25.2%)といずれも前事務年度を上回り、事績の公表を始めた平成28事務年度以降で過去最高を更新している。また、実地調査と簡易な接触を合わせた調査等合計の件数(2万3,200件)及び追徴税額(756億円)は過去5年間で最高であった。国税庁によると、それぞれの事案に即した適切な調査方法を見極めた結果、全体の事績は、新型コロナの影響を受けていない平成30事務年度の水準を上回るまでに回復しているとした。
また、国税庁では、CRS情報をはじめとした租税条約等に基づく情報交換制度などを活用し、海外取引や海外資産の保有状況の把握に努めているが、海外資産関連事案については、実地調査の件数は845件(前事務年度+28.8%)、申告漏れに係る非違件数は174件(同+51.3%)となっており、非違件数は過去最高を記録している。
なお、贈与税に対しては、2,907件(同+22.0%)の実地調査が行われ、非違件数は2,732件(同+22.8%)、追徴税額は79億円(同+15.1%)となっている。
そのほか、国税庁は、財産評価基本通達6項の適用が争点となった最高裁令和4年4月19日判決を踏まえた事務運営指針を同年7月1日付で各国税局等に示している。近年では、令和4事務年度は6件、その後は令和5年10月時点で3件を適用しており、最高裁判決以降、評価通達6項の適用件数は少しずつ増えている状況だ。同庁は、今後も、租税負担の均衡を損なうような事案に対しては適正に評価通達6項を適用していく方針を示している。