- 相続税e-Taxの利用率は29.5%と前年度より増加も、国税庁の令和5年度目標値の40%には大差がある状況。税理士等への周知が課題。
- 国税庁ホームページに「相続税e-Tax利用勧奨専用ページ」を10月に開設。さらなる利用を促す方針。
国税庁が公表した令和4年度の相続税申告のe-Tax利用状況等によると、令和4年度の相続税申告のe-Tax利用件数は6万1,000件と、前年度と比較して1万7,000件(対前年度+39.0%)増加している。利用率も29.5%と前年度に比べ6.1ポイント上昇しているが、同庁が掲げている令和5年度の利用率を40%とする目標値とは大きくかけ離れている状況だ。同庁では、各申告手続きのe-Tax利用拡大に向けた取り組みを行っているが、相続税申告のe-Tax利用においては、代理送信等を行う税理士等への周知が課題となっているという。
国税庁は、税理士等からの意見や要望を踏まえ、令和5年1月以降に相続税申告のe-Taxの機能を改善し、利便性向上を図っている。例えば、固定資産税評価証明書、登記事項証明書等の提出を原則不要としたほか、令和6年1月4日以降には、相続税e-Taxの受信通知の改善を行う予定だ。これまでは、税理士等が会計ソフトを利用して複数人の相続人の申告データを一括で代理送信したとき、会計ソフト上に表示される申告データを、データ形式等の適否を通知する「即時通知」から、電子証明書の有効性などの審査結果を通知する「受信通知」の閲覧サイトに遷移できないため、税理士等がe-Taxシステムに別途ログインし、受信通知を確認する必要があった。しかし、来年1月4日以降は、即時通知に相続人のリストを表示し、リストから各相続人の受信通知を閲覧できるサイトへの遷移ができるようになり、事務負担の軽減が図られることになる。そのほか、入力ミスなどで利用者識別番号に誤りがあり、受信通知でエラーメッセージが表示された場合に、エラー対象となった利用者識別番号が表示されないため、改めて全ての相続人の番号等を確認する必要があったが、受信通知のエラーメッセージにエラー対象の番号等が表示されるようになる。
ただし、これらの利便性向上策については、国税庁が税理士会を通じた利用勧奨などを実施しているものの、十分に周知されていないのが実態のようだ。同庁では、利便性向上策をまとめたリーフレット等を集約した「相続税e-Tax利用勧奨専用ページ」を今年10月に開設。今後は定期的に周知・広報を行うなどして、更なる利用率向上に取り組むとしている。