• 東京地裁、原告が自ら設立した有限責任事業組合の組合員として行った化粧品及びサプリメント販売事業の収益は原告一人に帰属するとした課税処分を適法と判断(令和6年2月16日判決)。

周知のとおり、有限責任事業組合から生じる所得については、その組合員が納税義務者となるが、有限責任事業組合の組合員が当該組合事業の業務執行に関与しないなど、組合員としての地位が単なる名義人にすぎず、また、その収益又は資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者が享受する場合には、当該収益等は当該収益等を享受する者に帰属するものとして所得税法等の規定を適用することになる。

東京地裁は、「有限責任事業組合の組合員は、全員が何らかの形で業務執行を行うことが必要とされているところ、その趣旨は、そもそも有限責任事業組合が、組合員全員がそれぞれの個性や能力を生かしつつ、共通の目的のために主体的に組合事業に参画することを可能にするために導入されたものであることに加え、損失の取込みだけを狙った租税回避目的の悪用を防ぐことにあると解される」とした上で、「組合員が組合事業の運営上重要な業務を行っていないときは、当該組合員の組合員としての地位は、単なる名義人にすぎないものと認めるのが相当である」との考えを示した。

そして、本件事業組合契約書には原告90%、原告母K氏9.8%、N氏0.2%の出資割合で出資する旨が記載されているものの、実際には原告が全額を出資している点を指摘。また、本件事業に係る契約の締結やそのための交渉、商品の価格の決定や受発注その他商品管理、本件各組合名義口座や現金の管理等、本件事業の運営上重要な業務については、専ら原告の判断や指示により行われており、本件各組合名義口座からは、原告個人名義の高級外車の代金やその駐車場の賃料、原告の自宅の賃料が支払われるなど、原告は、本件事業に係る収益を享受していると認められるとした。

他方、原告母K氏及びN氏は、本件事業組合契約上、組合員とされているものの、本件事業につき有限責任事業組合員の組合員が行う必要のある「業務執行」を行っていたとはいえず、その組合員としての地位は単なる名義人にすぎず、本件事業の収益や資産の譲渡等に対する対価を享受していないことから、本件事業の収益、本件事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、全て原告に帰属し又は全て原告が行ったものとするのが相当であるとし、課税処分は適法との判断を下した。