- 東京地裁、資本金1億円超の特定法人が仕入税額控除不足額の還付を受けるためには電子申告の方法により申告を行うことを要するとして、納税者の請求を棄却(令和6年1月12日判決)。
周知のとおり、平成30年度税制改正により、資本金1億円超の特定法人は令和2年4月1日以後開始課税期間から電子申告が義務付けられている(例外的に書面申告が認められるのは、災害その他の理由により電子申告が困難として申請書を提出し、税務署長の承認を得た場合のみ)。
本件は、書面申告により消費税の還付申告書を提出した特定法人が、仕入税額の控除不足額の還付を受けられなかったため、その還付を求めて訴訟を提起した事案である。
原告は、電子申告の義務化を定めた消費税法46条の2第1項及び2項(本件各規定)が財産権の規制は公共の福祉に適合しなければならないという憲法29条2項に違反していると主張した。
これに対し東京地裁は、租税法の定立については、裁判所は基本的には立法府の裁量的判断を尊重せざるを得ない(昭和60年3月27日最高裁判決)とした上で、本件各規定の憲法29条2項適合性を検討した。その結果、①本件各規定による電子申告の義務化は、「納税義務の適正な履行を確保する」という同法の目的に沿うものであり、公共の福祉に合致すること、②適用開始時期が令和2年4月1日以後開始課税期間とされたほか、例外的に書面申告を行うことができる旨の特例が設けられていること、③電子申告導入に伴う経済的負担は、特定法人にとっては過大なものとは認められないことなどを挙げ、電子申告の義務化が、上記の目的を達成するための手段として必要性もしくは合理性を欠くことが明らかとはいえず、立法府の裁量権の範囲を超えるものではないとの判断を下した。
また、原告は、消費税法の解釈上、電子申告は、控除不足額に係る還付金の還付を受けるための要件ではないとも主張した。この主張に対しても東京地裁は、消費税法52条1項によれば、控除不足額に係る還付金の還付請求権は、同法45条1項の規定による申告書を提出することによって発生し、特定法人については、本件各規定により、確定申告を電子申告により行わなければならない旨が規定されているのであるから、これらの規定の文言によれば、特定法人が、控除不足額に係る還付金の還付を受けるためには、電子申告を行わなければならないことは明らかであるとし、原告の請求を斥けている。