• 請求書の控えを保存しなかったことなどが隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為に該当するか争われた事案(東裁(所)令5第19号)。
  • 審判所、請求書の金額は、預金口座の入金履歴によって容易に確認することができたことなどから隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為に該当せず。原処分を取消し。

本件は、市販のDVDソフトを購入し納入するという業務を行っていた請求人が、当該業務に係る所得を申告していなかったことについて、原処分庁が、隠蔽又は仮装の事実及び偽りその他不正の行為があるとして重加算税の賦課決定処分等をしたのに対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。請求人は、請求書の控えを保存していなかった理由は、毎月請求内容が同一で、保存の必要がなかったからであるなどと主張した。

本件では、請求人が請求書の控えを保存しなかったことなどが隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為となるかが争われているが、審判所は、請求人が請求書に基づき請求した金額は、毎月同一の金額であったから、入金額等との対照のために請求書の控えを用いる必要性は高くなかったといえ、請求書に記載された金額は、請求人名義の預金口座の入金履歴によって容易に確認することができたとした。加えて、請求人は、各年分に作成した精算書の写しを保存していたことから、精算書の「入金済み購入金額」欄に記載された金額に固定報酬を加えることで、請求書に記載された金額を容易に確認することが可能であったとした。

したがって、審判所は、請求人が請求書の控えを保存しないことによって、収入金額の把握が特に困難になるような状況は認められない上、請求書の控えを保管する必要性がないと考えた請求人の申述も不自然とはいえないことを考慮すれば、故意に請求書の控えを保存しなかったとまでは認められないとし、隠蔽又は仮装に該当する積極的な行為には当たらないとの判断を示し、原処分を取り消した。

そのほか、請求人は、税理士に本件業務の報酬の存在を伝えていなかったが、税理士に対して虚偽を告げ又は税理士から確認を受けたにもかかわらず収入を告知していなかったような場合とは異なり、請求人が年金収入に関する資料に限って交付し、その他の収入については聞かれることもなく自ら資料を提出することもなかったという限度で、報酬の存在を税理士に伝えなかった事実が認められるにすぎず、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と認めることはできないとしている。