• 政府税調が税制のEBPMやデジタル化対応に向けた納税環境整備、退職金課税等を検討する3つの専門家会合を設置。公的年金の財政検証が今夏に予定されていることを受けて、退職金課税等は速やかに検討。
  • 翁会長、退職金課税等の見直しについて、財源確保のためではなく、働き方の中立の観点から議論を行うことが重要。

6月4日に開催された政府の税制調査会(会長・翁百合日本総研理事長)の第3回総会では、税制におけるEBPM(証拠に基づく政策立案)への取り組み、活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制の構築などについて、意見交換等が行われた。委員からは、EBPMを活用して税制の有効性を検証すべきとの意見が多く出た。特に法人を税制で優遇する租税特別措置法については、「租税の公平原則や中立原則の例外であり、期限を区切ることが大原則。期限が到来したら、必要性や有効性を徹底的に検証した上で、廃止も含めてゼロベースで見直す必要がある」との指摘があった。このほか、働き方の選択に影響を与えない税制の構築を求める声も上がった。

また、今後総会で扱うと想定されるテーマについて、議論を効率的に行う観点から専門家会合が3つ設置されることとなった。設置されるのは、①税制における客観的データに基づく有効性等の検証に関する議論を行う「税制のEBPMに関する専門家会合」(座長・赤井伸郎大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)、②「活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合」(座長・佐藤英明慶応義塾大学大学院法務研究科教授)、③税務手続きや適正・公平な課税・徴収のあり方等や、経済社会のデジタル化を踏まえた税務・税制のあり方についての議論を行う「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」(座長・岡村忠生京都大学名誉教授)となっており、いずれも並行して議論が進められる。特に、活力ある長寿社会に向けたライフコースに中立な税制に関する専門家会合については、5年に1度行われる公的年金の財政検証が今夏に予定されていることを受けて、退職金や年金に係る課税について速やかに検討を行うとしている。

翁会長は、会議終了後の記者会見で「財政が厳しいから財源確保のために見直すのではなく、純粋に働き方の中立性や、公正といった観点から経済社会の変化に対応できるよう検討することが重要。高齢期の人生設計にかかわるので、制度見直しの影響には十分留意して議論していく」と述べた。

(情報提供:株式会社ロータス21)