• 東京地裁、実際の支給額が事前に届け出た金額と異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないとして、処分取消しを求めた原告の請求を棄却(令和6年2月21日判決)。

原告の定時株主総会において、代表取締役2名に対しそれぞれ2,800万円の賞与を支払うことが決議され、原告は、処分行政庁に対し、本件決議の内容に関する届出を行った。しかし、実際に支払われたのはそれぞれ2,500万円であったため、処分行政庁は、本件各支給給与額が事前確定届出給与に該当しないとして損金算入を認めず、更正処分等を行った。

東京地裁は、①法人税法34条1項2号、施行令69条4項及び施行規則22条の3第1項3号は、事前に支給時期及び支給額が株主総会等において確定的に定められ、事前確定届出給与に関する届出がされた給与については、給与の支給額をほしいままに決定し、法人税の課税を回避する弊害がないため、これを損金に算入することを認めたものと解されること、②事前確定届出給与に関する届出書に記載された額と異なる額の役員給与が支給された場合に無制限に損金への算入を認めることとすれば、事前確定届出給与制度を設けた趣旨を没却し、課税の公平を害することになりかねないこと、③このため、施行令69条5項は、一定の事由に該当する場合に限り、変更後の定めの内容に関する届出をすることにより損金に算入することを認めていること、④このような施行令及び施行規則の定めは、法34条1項2号の委任の範囲内における合理的なものと認められることなどを指摘。届出がされた金額と異なる金額の役員給与が支給されたときは、当該役員給与の額は、法人税法34条1項2号(事前確定届出給与損金)の要件を満たさないとの考えを示した。

その上で東京地裁は、本件支給給与額は届出額と異なり、原告は施行令69条5項所定の変更後の定めの内容に関する届出をしていないから、本件各支給給与は事前確定届出給与に当たらず、本件各支給給与額の合計額(5,000万円)を損金の額に算入することはできないとの判断を下した。

原告は、本件各支給給与額と本件各届出給与額の差額(各300万円)については、役員給与の一部が未払の状態にすぎないなどと主張したが、東京地裁は、「未払賞与」と計上していない原告の会計処理に照らしてもにわかに認め難く、仮に一部が未払の状態にすぎないとしても、法34条1項2号の要件を満たすとはいえないなどとして、その主張を斥けている。