• 確定申告書等の内容から国外財産調書等に記載すべき財産が特定できる場合であっても、納税者が提出した国外財産調書等の記載内容から財産の特定が困難な場合には、加算税の加重措置が適用されると判断された事案(令和5年12月7日裁決)。

国外財産調書制度には、適正な提出を確保するための特例措置として加算税の軽減加重措置が設けられており、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(国送法)6条3項では、調書の提出がないとき又は提出された調書に記載のない国外財産に係る所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を加重すると規定されている。

本事案は、請求人が、国外財産等に関して生じる所得の申告漏れ等があったとして修正申告をしたところ、原処分庁が、国外財産又は財産債務に係る過少申告加算税の特例による加重措置を適用して過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、請求人が原処分の一部の取消しを求めたもの。請求人の国外財産調書又は財産債務調書の記載内容が国送法6条3項2号などに規定する「重要なものの記載が不十分である」場合に該当し、過少申告加算税の加重措置が適用されるか否かが争われている。

請求人は修正申告の基因となった財産から生ずる所得について確定申告を行ったことや、原処分庁の調査担当職員から本件財産について確認があったことなどを理由に、本件財産は特定済みであるから「重要なものの記載が不十分である」場合には該当しないなどと主張していた。

審判所は、国外財産及び財産債務の軽減加重措置が、調書の提出及び適正な記載を確保するためのインセンティブとして設けられていることに鑑みると、軽減加重措置の適用の可否の判断は、各調書全体の記載内容から行うべきであるとの見解を示した。その上で、請求人が提出した国外財産調書は、物件の種類欄や用途欄の記載に誤りがあるだけでなく、所在地や戸数、床面積についても誤りがあり、又は記載がないことが認められるとした。また、請求人が所有する譲渡株式を含む株式について、財産債務調書に「株式」であるとの種類やその数量の記載もないとして、各記載内容から財産の特定は困難であるとした。

したがって、審判所は、国外財産調書及び財産債務調書の記載内容は「重要なものの記載が不十分である」と認められるから、修正申告に係る過少申告加算税の加重措置は適用されるとの判断を示し、請求人の主張を斥けた。