• 滞納会社が支給した役員退職慰労金の不相当に高額である部分が、無償譲渡等の処分(徴収法39条)に該当すると判断された事案(令和5年12月14日裁決)。

本事案は、滞納会社が請求人に対して役員退職慰労金として支給した不動産及び生命保険契約の契約上の地位等が、国税徴収法39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する、無償譲渡等の処分に該当するか争われたもの。原処分庁は、支給額は役員退職慰労金として相当と認められる金額と比較して対価的均衡を著しく欠くものであるから、当該支給は著しく低い額の対価による譲渡に該当するとして、請求人に第二次納税義務の告知処分を行った。これに対して請求人は、本件支給は、請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の範囲内であり、徴収法39条に規定する無償譲渡等の処分には該当しないなどと主張して、原処分の全部の取り消しを求めていた。

審判所は、徴収法39条の無償譲渡等の処分に該当するかどうかは、平均功績倍率法によって求めた相当とされる役員退職給与の金額と、実際に支給された役員退職給与の金額の乖離の程度に加えて、当該役員の職務又は功労の内容、程度、勤務年数のほか、当該役員退職給与が支給されるに至った具体的事情等をも考慮した上で判断するのが相当であるとした。その上で、原処分庁が平均功績倍率法により算出した同業類似法人の平均功績倍率は1.09倍であり合理性が認められるところ、請求人に対する役員退職慰労金として支給された金額は、滞納会社の同業類似法人の平均功績倍率を2.45倍、請求人の役員勤務年数を9年として算定したものであり、請求人の役員退職慰労金として相当と認められる金額の7倍を超えると指摘した。

また、乖離の程度が大きいことに加えて、本件支給決議が行われた当時の滞納会社の状況は、その総売上げは減少しており、滞納国税を納付する見込みも乏しかったにもかかわらず、主な業務を社員教育とし、滞納会社の経営を担っていたとはいえない請求人に対して、重要な資産であった不動産及び生命保険契約を役員退職慰労金として流出させたのは、滞納会社が滞納国税の徴収などを回避するためであり、請求人の職務及び功労と役員退職慰労金の金額との対価的均衡を考慮した上で決定したものではないことが認められるとした。

したがって、審判所は、役員退職慰労金の支給は徴収法39条に規定する無償譲渡等の処分に該当すると判断し、請求人の主張を斥けた。